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そしてこの地震は海底の神殿にも届いていた。 「随分長い地震だな……」 クリシュナが辺りを見回す。 「何処かの海底火山でも噴火したんでしょう」 カーサの返事で他の海の将軍たちは妙に納得してしまった。 今は海の支配権が女神ヘカテに移っているので、自分たちが動く訳にはいかない。 それゆえに、彼らは一つの決心をしていた。 「そういえば、あの美人は?」 バイアンはエウリュディケーを名前で呼ばずに、美人と言う。 「彼女は女神ヘカテの腹心だから、女神の神殿にいる人だって。ここは一時的な神殿だから、めったに来ないらしい」 イオの返事にバイアンは少々残念がる。 「今やポセイドン神殿は、女神ヘカテの出張神殿か……」 そこへエウリュディケーがやってきた。 「海闘士の将軍さま方、お怪我などされていませんか?」 「大丈夫だ」 バイアンがにこやかに答える。 「何かあったのか?」 イオが尋ねる。 しかし、彼女は首を横に振った。 「ここは安全なので、どうかご心配なく」 するとクリシュナがエウリュディケーの前に出た。 「側近殿、このような事を頼むのは心苦しいが、我々がここを出る事を許しては戴けないか?」 「何か不手際がございましたか?」 エウリュディケーが青ざめる。 「いいや、このような行き届いた待遇には非常に感謝している。ただ、聖域に行っている仲間の様子をみたいのだ。 この暇乞いは、純粋に我々の我が侭だ」 彼らの真剣な眼差しに、エウリュディケーは優しく微笑んだ。 「それでは、ヘカテ様にそのようにお伝え致します。 ただ、明日の朝のご出立ということで、お願いして宜しいでしょうか?」 「明日?」 「ここの神殿の料理長が、皆様に食べて頂きたいと昨日から準備していた料理がありまして、厨房が物凄い騒ぎになっているそうです」 いきなりいなくなったら、ここの料理長は倒れるかもと言われると、さすがに一晩くらいならと思ってしまう彼らだった。 「随分、俺たちとは違う神殿のシステムだな」 バイアンが感心する。 「女神の神殿って、こういう仕組みなのか?」 平和な話である。 |
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