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女王の島 5

連絡があった直後、アイオロスが瞬を担いでソレントと共に戻ってきた。
「アテナ、ご無事で何よりです」
「アイオロス!セイレーンと一緒とはどういう事だ?」
アルデバランが周囲の様子を気遣うが、あの白い妖気は現れない。
「それが、一度喰らったのですが、なんともなかったんです。それっきり追いかけられなくなりました」
ソレントにはその理由が薄々予測出来ていた。女神ヘカテの加護が自分の鱗衣にあったからだろう。
しかし、そこまで説明しなくてもいい気がした。
「アンドロメダは大丈夫なのか?」
パンドラが心配そうにアイオロスに尋ねる。
彼はそのままパンドラの前に瞬を下ろした。
「呼びかけても返事がないのです」
全身が泥だらけだった。
すると彼女は瞬の上体を抱き起こすと、軽く頬を叩いて呼びかけた。
「アンドロメダ、しっかりするのだ」
沙織は彼女が瞬をハーデスと呼ばないことに少なからず驚いた。
「パンドラ……、瞬を聖闘士と認めてくれるの?」
その言葉にパンドラは沙織を睨み付ける。
「私の弟は眠りについている。これはアンドロメダだ。弟の魂が入っていないのに、何故私が聖闘士を弟と呼ばねばならない。
アテナは私をそこまで愚かな女と思っていたのか」
その剣幕に沙織も聖闘士たちも驚く。
「どうして起きないのだ!」
「とにかく聖域に連れて行きます。 アルデバラン、アンドロメダを連れて行ってくれ。 もしかすると他の四人も居るかもしれないから、向こうで受け入れ態勢の準備を頼む」
アイオロスの指示に彼は頷き、瞬を担いぐ。 そして沙織とパンドラに一礼するとその場から立ち去った。
パンドラはしばらくその姿を見送った後、ソレントの方を見た。
「昨日別れただけなのに、何故か懐かしいな。 お前も巻き込まれたのか?」
「嵐だと思って、諦めています」
「確かに嵐だな……。 それでは嵐が収まったら、またお前のフルートを聞かせてくれないか?」
パンドラがぎこちなく微笑む。
「喜んで……」
その時、ソレントは彼女の背後にいる冥闘士の刺すような視線を感じた。
(……殺意を感じるのは、気のせいでは無いみたいだけど……)
友好的な会話をして睨まれるのは割に合わない話である。