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連絡があった直後、アイオロスが瞬を担いでソレントと共に戻ってきた。 「アテナ、ご無事で何よりです」 「アイオロス!セイレーンと一緒とはどういう事だ?」 アルデバランが周囲の様子を気遣うが、あの白い妖気は現れない。 「それが、一度喰らったのですが、なんともなかったんです。それっきり追いかけられなくなりました」 ソレントにはその理由が薄々予測出来ていた。女神ヘカテの加護が自分の鱗衣にあったからだろう。 しかし、そこまで説明しなくてもいい気がした。 「アンドロメダは大丈夫なのか?」 パンドラが心配そうにアイオロスに尋ねる。 彼はそのままパンドラの前に瞬を下ろした。 「呼びかけても返事がないのです」 全身が泥だらけだった。 すると彼女は瞬の上体を抱き起こすと、軽く頬を叩いて呼びかけた。 「アンドロメダ、しっかりするのだ」 沙織は彼女が瞬をハーデスと呼ばないことに少なからず驚いた。 「パンドラ……、瞬を聖闘士と認めてくれるの?」 その言葉にパンドラは沙織を睨み付ける。 「私の弟は眠りについている。これはアンドロメダだ。弟の魂が入っていないのに、何故私が聖闘士を弟と呼ばねばならない。 アテナは私をそこまで愚かな女と思っていたのか」 その剣幕に沙織も聖闘士たちも驚く。 「どうして起きないのだ!」 「とにかく聖域に連れて行きます。 アルデバラン、アンドロメダを連れて行ってくれ。 もしかすると他の四人も居るかもしれないから、向こうで受け入れ態勢の準備を頼む」 アイオロスの指示に彼は頷き、瞬を担いぐ。 そして沙織とパンドラに一礼するとその場から立ち去った。 パンドラはしばらくその姿を見送った後、ソレントの方を見た。 「昨日別れただけなのに、何故か懐かしいな。 お前も巻き込まれたのか?」 「嵐だと思って、諦めています」 「確かに嵐だな……。 それでは嵐が収まったら、またお前のフルートを聞かせてくれないか?」 パンドラがぎこちなく微笑む。 「喜んで……」 その時、ソレントは彼女の背後にいる冥闘士の刺すような視線を感じた。 (……殺意を感じるのは、気のせいでは無いみたいだけど……) 友好的な会話をして睨まれるのは割に合わない話である。 |
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