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デスクィーン島は、女神の加護を受けられない暗黒聖闘士がいた場所である。 既に彼らの姿はここにはないのだが、島を覆う妖気のようなものは健在だった。 沙織自身がこの島へ来たのはもちろん初めて。 「エリスは何を探しているの?」 「色々なモノだ」 エリスの回答は抽象的だった。 「そんな返事で、人を納得させられると思っているのか!」 カノンが背後で、彼女の事を睨み付ける。 「シードラゴン、彼女に対して脅迫は利きませんよ。彼女に関わる事を選んだ貴方の考えが甘いんです」 ソレントが溜息をつきながら、カノンを宥める。 「どうせ、私たちをコキ使うつもりです。嵐だと思って、諦めたほうが幸せですよ」 酷い言われよう。 「セイレーン。聡い男は嫌いではないが、諦めは株を下げるぞ」 争いの女神も負けてはいない。 「では、探しているものを一つだけ教えてやろう。 少々訳ありで、一人の女神を探している」 エリスの言葉に、沙織とカノンは脳裏に小さな痛みを感じた。 「だが、色々と探しても会えないから、考え方を変えて強制的に見つけ出す事にした」 迷惑な話だとその場にいた全員が思う。 「もしかしたらエリスに会いたくないのかもしれませんよ」 ソレントは厳しい発言をさらっと言った。熱い大地の上で、その場の空気が凍る。 しかし、エリスは怒る様子でも無く話を続けた。 「それなら逃げているという態度がこちらに判らねばならない。それが無いのだから、どのような手段で見つけようと、文句を言われる筋合いは無い」 (そんな無茶な……) 闘士たちの素直な感想だった。 「いったい誰に会いたいの?」 そう言った時、沙織は一瞬、エリスに睨まれたような気がした。 「それはこっちの事情だ。下手に関わる事は無い」 既にその態度で、エリスには喋る気が無いことが読み取れる。 「理由が気に入らないのなら、戻れ。アテナが協力する事は無い」 海闘士たちの方に選択権は最初から無いらしい。 「海闘士たち。相手は海の眷属だ。この炎の世界から海の気配を感じ取ってくれれば良い。無ければ居ないという事で諦める」 そう言ってエリスは歩きだした。 「エリスには一応、冥界での恩がありますから、私は協力します。 それに何か悪い事をしようとしているのなら、誰かが止めなくてはなりません」 再びキツイ事を言って、ソレントは彼女の後を追った。 「まぁ、俺たちを見つけてくれたからなぁ。 正直言って、俺たちで止められる女神とは思えないけど……」 クールに状況を判断をしたアイザックが二人を追って駆けだす。 「……目を離すときっと何かをしでかす女だ。 アテナ、あの女神に付き合う事はありません。 お戻り下さい」 カノンに言われたからと言って、引き下がる沙織ではなかった。 「行きます!私は彼女が何をしようとしているのか、見届けます」 彼女はさっさとエリスの方へ走って行く。 「何も無ければそれで良いじゃないか」 アイオロスは楽観しているらしい。 「カノン。行かないのか?」 「行くに決まっているだろう! あの女……、俺を利用する事の愚かさを思い知らせてやる」 怒りのオーラを立ち昇らせてズカズカと歩くカノンを見て、アルデバランは小さく溜息をついた。 (そういう性格だから、エリスに利用されるんだと思うが……。) 争いの女神とトラブルメーカーが揃っているのだ。 (只では済まないだろう……) だが、彼は朝の沙織の楽しそうな表情を見て、聖衣を装着して行くとは言えなかった。 彼は仕方ないと言いたげな表情をすると、皆の後を歩きはじめた。 |
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