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女王の島 1

デスクィーン島は、女神の加護を受けられない暗黒聖闘士がいた場所である。
既に彼らの姿はここにはないのだが、島を覆う妖気のようなものは健在だった。
沙織自身がこの島へ来たのはもちろん初めて。
「エリスは何を探しているの?」
「色々なモノだ」
エリスの回答は抽象的だった。
「そんな返事で、人を納得させられると思っているのか!」
カノンが背後で、彼女の事を睨み付ける。
「シードラゴン、彼女に対して脅迫は利きませんよ。彼女に関わる事を選んだ貴方の考えが甘いんです」
ソレントが溜息をつきながら、カノンを宥める。
「どうせ、私たちをコキ使うつもりです。嵐だと思って、諦めたほうが幸せですよ」
酷い言われよう。
「セイレーン。聡い男は嫌いではないが、諦めは株を下げるぞ」
争いの女神も負けてはいない。
「では、探しているものを一つだけ教えてやろう。 少々訳ありで、一人の女神を探している」
エリスの言葉に、沙織とカノンは脳裏に小さな痛みを感じた。
「だが、色々と探しても会えないから、考え方を変えて強制的に見つけ出す事にした」
迷惑な話だとその場にいた全員が思う。
「もしかしたらエリスに会いたくないのかもしれませんよ」
ソレントは厳しい発言をさらっと言った。熱い大地の上で、その場の空気が凍る。
しかし、エリスは怒る様子でも無く話を続けた。
「それなら逃げているという態度がこちらに判らねばならない。それが無いのだから、どのような手段で見つけようと、文句を言われる筋合いは無い」
(そんな無茶な……)
闘士たちの素直な感想だった。
「いったい誰に会いたいの?」
そう言った時、沙織は一瞬、エリスに睨まれたような気がした。
「それはこっちの事情だ。下手に関わる事は無い」
既にその態度で、エリスには喋る気が無いことが読み取れる。
「理由が気に入らないのなら、戻れ。アテナが協力する事は無い」
海闘士たちの方に選択権は最初から無いらしい。
「海闘士たち。相手は海の眷属だ。この炎の世界から海の気配を感じ取ってくれれば良い。無ければ居ないという事で諦める」
そう言ってエリスは歩きだした。
「エリスには一応、冥界での恩がありますから、私は協力します。 それに何か悪い事をしようとしているのなら、誰かが止めなくてはなりません」
再びキツイ事を言って、ソレントは彼女の後を追った。
「まぁ、俺たちを見つけてくれたからなぁ。 正直言って、俺たちで止められる女神とは思えないけど……」
クールに状況を判断をしたアイザックが二人を追って駆けだす。
「……目を離すときっと何かをしでかす女だ。 アテナ、あの女神に付き合う事はありません。
お戻り下さい」
カノンに言われたからと言って、引き下がる沙織ではなかった。
「行きます!私は彼女が何をしようとしているのか、見届けます」
彼女はさっさとエリスの方へ走って行く。
「何も無ければそれで良いじゃないか」
アイオロスは楽観しているらしい。
「カノン。行かないのか?」
「行くに決まっているだろう! あの女……、俺を利用する事の愚かさを思い知らせてやる
怒りのオーラを立ち昇らせてズカズカと歩くカノンを見て、アルデバランは小さく溜息をついた。
(そういう性格だから、エリスに利用されるんだと思うが……。)
争いの女神とトラブルメーカーが揃っているのだ。
(只では済まないだろう……)
だが、彼は朝の沙織の楽しそうな表情を見て、聖衣を装着して行くとは言えなかった。
彼は仕方ないと言いたげな表情をすると、皆の後を歩きはじめた。