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嵐の前 3

「何よそれ!」
沙織は今聞き出そうとするが、争いの女神は笑うだけで喋る気は全然ない。
「そんなものは無いと豪語するかと思ったが、アテナ自身何か心当たりがあるのか?」
エリスは意地悪く笑った。
「私は争いの女神だ。私の口車に乗らないほうが、平和に暮らせるぞ」
しかし沙織は『天下無敵の我が侭お嬢』だった。既に売られた喧嘩は買う気になっている。
他の闘士たちはアイオロスが何か言うかと思っていたが、彼は厳しい眼差しで二人の女神の事を見ている。
先程まで明るい顔をしていた男とは別人の様だと、彼らは思った。
沙織は決断する。
「貴女からの挑発に乗るのではありません。黄金聖闘士たちの実力を貴女に教える為に、その勝負に受けてたちましょう」
ご立派です……と、彼らは心の中で呟いた。
(昨日の注意事項は何だったんだ?)
サガとカミュは困惑の表情をした。
「では、その五人はアテナが選べ」
アイオロスは争いの女神の様子を注意深く観察する。
「誰を出すのだ?」
答えたのはアイオロスだった。
「アテナ、この勝負はアイオリア、カミュ、ミロ、シュラ、アフロディーテにやらせるのが良いと思われます」
サガは少し驚いたが何も言わなかった。
結局、そのメンバーで亡霊聖闘士たちを捕らえる事が決定。カミュはそれを聞くとアイザックに対して微笑んだ。
問題ばかり起こす女神はアイオロスの方を見る。
「そうか、射手座はオルクスで五人を見ていたな。
よかろう。お前がそう判断したのなら、さぞかし面白い戦いになるな。実際に見る事が出来ないのが残念だ」
エリスはそう言うと、さっさと白羊宮を出た。
「待って、エリス」
沙織が彼女の後を追う。
「サガ、後の事は頼む」
アイオロスは友人に手を振って、沙織の後を追った。
「判った……」
サガは彼らを笑って見送ったが、その心の奥底では何かが蠢き始めていた。

サガからの小宇宙による連絡で、さっそく亡霊聖闘士たちの捕獲作戦が開始された。
既にアイオリアたちには亡霊聖闘士たちの姿や印象をアイオロスが的確に伝えている為、彼らを見つけるのには時間はかからない。
「黄金聖闘士が動いたか」
ジャガーたちは心が沸き立つのを抑えられなかった。