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嵐の前 2

翌朝の聖域。
白羊宮にやって来たエリスは、沙織たちの姿に目を見張ってしまった。
「アテナ、それは何の冗談だ」
「えっ、だってデスクィーン島へ行くんだから、これくらいの格好をしないと」
沙織は山登りをするのかと言われそうな、典型的な登山服と登山靴を身につけていた。そして髪をポニーテールにしてまとめている。
鱗衣を装着している海闘士たちとは明らかに異質。
「ふざけているのか!」
「私は本気よ。いつも場所を考えない服装をしているって文句言われるから、今回は気合を入れてグラード財団関係のスポーツ用品研究所からデザインの可愛いものを選んだのだから、文句は言わないで」
実は昨夜、魚座のアフロディーテに頼んで研究所へ行き似合いそうなグッズを選んでもらったらしい。
それも三人分……。
「だからといって、何で黄金聖闘士たちまでその服装なんだ!」
沙織の後ろにはやはり同じように、登山服に登山靴というこれから日帰りでトレッキングをしますといわんばかりのアイオロスとアルデバランがいた。
ソレントは苦笑するしかない。この三人は金牛宮でこっそりと着替えたのである。
カノンとアイザックを見送りに来たサガとカミュは、もう何も言いたくないという表情をしていた。
この会話は既に彼らともやっていたからである。
「私たちの事は気にしないでください」
アイオロスが穏やかな笑みを浮かべる。 ムウは気が遠くなるような気がした。
(アイオロスって、こんなに脳天気な人だったのか?)
本当にアイオリアの兄なのだろうかと、彼は考え込んでしまった。
「ところで、エリスのところの五人はどうしたの?」
沙織は辺りを見回したが、亡霊聖闘士たちの姿は見当たらない。
「今日は別行動だ」
「そうなの?」
するとエリスは面白い事を考えついたらしく、いきなり沙織に顔を寄せた。
「アテナ、一つ勝負をしないか?」
「えっ?」
「アテナの黄金聖闘士たち五人があいつら五人を全員捕まえられれば、アテナの勝ち。昔の聖域がアテナに沈黙し続けていた事をあいつらに話させよう。
だが、日の入りまでに一人でも捕まえ損なったら、私の勝ち。この話は二度としない」
エリスの申し出にその場にいた者たちは驚く。
「聖域がアテナに沈黙し続けていた事……」
これにはアイオロスも険しい表情になった。