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動きだした時間 4

「サガ!」
一人の男が神殿に駆け込んできた。双子座のサガはその男を見て動きが止まる。
神殿内にいた男たちは二人に注目した。
「カノンか……」
しかし、感動の再会とはほど遠い展開になった。
「お前ら!守護宮を開けて何やっているんだ!」
カノンはシードラゴンの鱗衣をまとっているのだが、発言は双子座の聖闘士そのままだった。
サガは呆然とした面持ちで、双子の弟の事を見る。
「バカ兄貴、さっさと守護宮に戻れ」
「バカ兄貴とは何て言い種だ!それにお前こそ鱗衣をまとって、再びアテナに敵対する気か」
再会した途端に喧嘩を始めた双子に、全員唖然とした。
「二人とも今は喧嘩は止めろ。カノン、久しぶりだな」
アイオロスの仲裁に二人は一応喧嘩を取りやめる。背後ではアイオロスに感心する声が聞こえる。
「アイオロス!」
カノンは13年振りに見る射手座の聖闘士をじっと見た。そしてアイオリアを一瞥する。
彼は聖戦の直前に兄の罪を沙織から聞いている。
邪悪な心に支配された兄が親友を陥れ、その弟を苦しめていた。だからこそアイオリアの気持ちが理解できる。
アイオリアもまた兄のスペアとして、聖域の悪意を一身に受けていたのだろう。
カノンはアイオロスの肩を叩く。
「随分年相応な姿だな。13年前のまま復活かと思っていたぞ」
するどいツッコミにアイオロスは苦笑した。
「これには自分でも驚いているよ。しばらく鏡の中の自分に違和感がありそうだ。 それより同じ時期に復活の筈だが、随分早くここにたどり着いたな」
その時、背後から一人の禍々しい印象の女性と二人の海闘士が現れた。
「シードラゴン、早い!」
そう言って駆け上がってきたアイザックを見て、カミュが前に出た。
「アイザック!」
行方不明になっていた弟子の出現に、彼は驚いた。
「師匠、お久しぶりです」
アイザックは敬意を払った礼をする。 そしてソレントはアルデバランの姿を見つけて、一瞬戸惑いの表情を見せた。
「感動の再会はいい。アテナを呼べ」
エリスはシードラゴンに命じたが、快く引き受けたのはアイオロスだった。
「女神エリス。只今、アテナを呼びます」
これにはサガや他の黄金聖闘士たち、カノンすら驚いていた。
「アイオロス、こんな怪しい奴の言うことを信じるのか!」
連れてきたカノン自体が、この暴言を吐くのだから始末におえない。
エリスの表情に険しいものが現れた。