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動きだした時間 2

アテナの降臨。
シャイナは女神と黄金聖闘士たちの姿を見た瞬間、その言葉を呟いた。
(帰って来たんだ……)
アテナが星矢の姉と話をしている間、彼女の視線は一人の黄金聖闘士に向けられた。
彼もまた自分のことを見ている。
「シャイナ……」
隣りにいた魔鈴が彼女にマスクを渡す。
シャイナは顔を隠すように後ろを向いてマスクを着ける。マスクの下から、涙が溢れて止まらなかった。

(よかったな。アイオリア……)
魔鈴は十三年ぶりに揃った黄金聖闘士の兄弟を見る。
彼の視線が自分に向けられた時、思わず彼女はその視線から逃げてしまった。
彼は結構、ショックを受けたようである。

星華を魔鈴とシャイナに託して、沙織は神殿へ戻った。
未だに行方が判らないのは女神の聖衣も同じだった。
「いつも一緒だったニケがいないなんて……」
しかし、今はとにかく試練をクリアして他の聖闘士たちを復活させなくてはならない。
沙織は深呼吸をすると、黄金聖闘士たちの前に出た。
十二人の黄金聖闘士たちが片膝をついて礼をする。
「この度は、皆に辛い思いをさせました。でも、全員が地上を守る為によく決断をしてくれました。
ありがとう」
沙織の目から涙が零れた。
全員、頭を下げているのだから見られる事はないのだが、声が震えるのだけは止めようがない。
一人、また一人と沙織の方を気にかけて頭を上げる。
「アテナ、我等は……」
サガが何かを言いかけたのを沙織は遮った。
「ところがね、あの聖戦でちょっと問題が発生したの」
半泣きではあるが、沙織はわざと明るい声を出した。全員、言葉の意味が判らずざわめく。
アイオロスのみ、頭を下げたままだった。
「アテナ、問題と申しますと……」
サガが不安げに尋ねる。
「黄金聖闘士・海闘士の七将軍・冥闘士の三巨頭が全滅ということで、古の約束により貴方たちの復活が行われる事になったのよ」
「それでは、あの者たちも復活するということですか」
サガの脳裏に三巨頭の一人の顔が思い出された。
「それは別に気にしなくて良いわ」
気にするなと言われても、気になってしまう黄金聖闘士たちだった。アイオロス以外は……。
「それで、どうせなら全員復活させて欲しいと言ったら二つの試練を言い渡されてね。
一つはクリアしたけど、もう一つが三日後に行われるの。
それまで貴方たちの身体は仮の肉体だから、不用意に戦闘参加して怪我をしないように。どうやら回復力が落ちているそうだから」
黄金聖闘士たちの間にざわめきが起こる。
「アテナ、全員とは?」
「全員は全員よ。青銅・白銀聖闘士と海闘士と冥闘士」
神殿内の空気が一瞬凍った。