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「それにシードラゴンに謀られているという図式は、ポセイドン様のプライドから言っても絶対に認めないだろうし、こっちもあまりにも情けない話だからな」
バイアンは溜息をついた。 「でも何故私には教えてくれなかったのですか!」 衝撃の事実に怒りが沸騰したのは、ソレント。 これには全員苦笑している。 「教えようと思ったんだけど、セイレーンが怒りに任せてシードラゴンと仲違いすると、防御面に問題が発生しそうで出来なかった」 事実、先の戦いの時ソレントはカノンと見事に仲違いしている。 自分の性格が読まれていた事に、彼は少々恥ずかしさをおぼえた。 「セイレーンはポセイドン様の事になると冷静でなくなるからな」 アイザックが笑う。 『海妃アムピトリーテに聞かせたい話だな』 女性の声に海闘士たちは驚いてエウリュディケーの方を見たが、彼女はにこにこと笑っている。 「女神エリス、どちらにおいでですか?」 「ここだ」 争いの女神はエウリュディケーの斜め後ろに現れた。 「女神エリス!」 ソレントは思わず叫んだ。 カノンは初めて見るその女神に、嫌な印象を受ける。 (こいつが争いの女神……) ソレントの印象では『訳の分からない女神』だが、自分の第一印象はあからさまに『近づくと危険』 「……セイレーンの鱗衣が修復されているな」 エリスはそう言いながらも、カノンの方を時々見ていた。 「はい。ヘカテ様がセイレーン様の演奏のお礼だと申しておりました」 「女神ヘカテから礼とは、永代の誉れだな。セイレーン」 「私も嬉しく思います」 何を考えているのか判らない女神の登場に、ソレントは緊張した。 他の海闘士もその経緯を聞いているので、何が起こるのかと警戒する。 「ところでシードラゴン。お前の力を借りるぞ」 エリスとカノンの視線があった時、エウリュディケー以外の全員が火花の音を聞いた。 「俺に何の用だ」 「まずは私とこれから聖域に行ってもらう。詳しい話はそれからだ。 あと二人くらい入り用だから人選はそっちに任せる」 「断るといったらどうする」 その場の空気が凍る。 さすがにエウリュディケーも不安げな顔になった。 「お前は断らない。危険な存在を野放しにする程、愚かではないからな」 勝負はあったと、全員が思った。カノンは周りを見回して、二人の人物に目を止める。 「えっ!」 「何で私が!」 掴まったのはアイザックとソレント。 「エウリュディケー、済まないが他の海闘士たちの事を頼む」 エリスに言われて彼女は優しく微笑んだ。 「それについてはヘカテ様からも言われておりますから、ご安心ください」 「では行くぞ」 そして『危険な女神』は三名の海闘士を連れて、その場から消えた。 「それでは皆さん、たいしたお持て成しも出来ませんが、宜しければ神殿でお待ちください」 エウリュディケーに案内されて四人は神殿へ向かう。 「あのメンバーで大丈夫かなぁ」 イオが隣にいたバイアンに尋ねた。 「それこそ試練だな」 海馬のバイアンはそう言って笑った。 |
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