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海闘士側の話 3

「お久しぶりでございます」
カノンはその言葉に背筋が寒くなった。
(まさか本当にあの時の女なのか!)
あの時の自分は双子座の聖衣をまとっている。
(今と違う事に気付かれたら、他の奴らに俺がアテナ側についた事がバレる。いっそサガだったとしらばっくれるか。でもそうすると芋づる式に俺がやはりアテナの関係者である事が……。
それ以上にソレントがそんな対応を許さない!)
しかし、当のソレントは彼女の言葉に驚いていた。
「エウリュディケーさん。シードラゴンを知っているのですか?」
「冥界で一度お会いしました」
他のメンバーは全員カノンの事を睨む。
「冥界で女の人を口説いていたんだ!」
「聖闘士たちに負けた反動か?」
「テティスが聞いたら、怒るなぁ。あれはそういう事には厳しかったから」
「まぁ、これだけの美人に逢って口説かないのもどうかと思う」
「バイアン、お前も男だったんだな」
アイザック・イオ・カーサ・バイアン・クリシュナは思いっきり野次馬状態になっていた。
こうなってくると早急に訂正しておかないと有らぬ濡れ衣を着せられかねない。
意を決してカノンは怒鳴った。
「俺が彼女に会ったのはハーデスとの戦いの時だ!
俺の兄はアテナの聖闘士なのだが、あいつが死んでややこしい事にハーデスの手先になんぞになるから、俺が兄の後を継いで双子座の聖闘士になったんだ! その時に……」
カノンははっとして全員の顔を見る。
アイザックとバイアンはにやにや笑い、イオ、クリシュナ、カーサは呆れ返ったような顔をした。
「お前ら、何だその反応は!」
ソレントもこの全員の反応は意外だった。
「まさか、私以外全員知っていたのですか」
「セイレーン、悪いな」
クリシュナはあまり誠意を感じないない謝罪を口にした。
「シードラゴンがただ者じゃない事に気付いたのはクラーケンだ。彼も元は聖闘士候補生だったからな。 それからは、まぁポセイドン様は地上支配に乗り気だったし、シードラゴンは聖闘士を嫌っているようだったから、七将軍の一人としてみんな自分の任務を遂行した」
彼は自分の持っている槍を懐かしそうに見つめた。
「しかし、何故そのことを海皇に言わなかった。何故俺を疑わなかった」
カノンの言葉にバイアンは溜息をつく。
「シードラゴンの鱗衣をまとっているのに、海闘士の方が反目してどうするんだ?」
カノンは驚いて自分の鱗衣を見る。
「鱗衣は神の時代から海闘士と共にいた。海闘士に相応しくないものに使われる訳がないだろ」
これほどまでに明確な答えはなかった。