INDEX

海闘士側の話 2

しかし、この不可解な事態を説明できるのは自分しかいないので、ソレントは物凄い形相で『とにかく最後まで喋らせる事!』と全員を脅迫し、今までの経緯を話した。
冥界での女神たちの試練と自分たちの置かれている立場。そして、この三日間は仮の身体である為に、不用意な戦いを避けねばならぬ事を……。
「アテナがそのような事を……」
カノンは厳しい表情になった。
「私はオラクルから出る事は許されない立場でしたが、多分闘士たちの魂を探すのは大変だったと思いますよ」
全員の間に沈黙が流れた。
イオが小さく笑いだす。
「アテナには完敗だな」
その言葉にアイザックも笑った。
「まったくだ」
全員が互いに顔を見合わせて笑いあう。
その時、神殿から一人の女性が現れた。
(テティス!)
全員、一瞬そう思ったが、それは全然違う女性であった。
ソレントはその女性を知っていた。
「エウリュディケーさん……」
今の彼女は懲罰の鎧をまとってはいない。ソレントはそれを見てほっとする。
そしてカノンもその女性を見知っているような気がした。
(どこかで……確か、冥界の……)
記憶が断片的に蘇り、彼は冥界の花畑で出会った女性を思い出した。
(半分石にされていた女に似ている)
しかし他人の空似だろうと考えた。
「セイレーン。エウリュディケーってさっきの話に出てきた審判役か?」
イオの言葉にソレントは頷く。
彼女は全員に会釈すると、ソレントの元へ近づいた。
「セイレーン様、これをお受け取りください」
彼女は青い光をソレントの前に出す。
「何ですか?これは」
「女神ヘカテ様より、美しい調べのお礼だそうです」
一瞬、ソレントは警戒したが、直ぐにその考えを振り払う。
「ありがとうございます」
彼が手を出すと、青い光は彼の鱗衣の上を走るように駆けめぐり、その破損を見事に修復したのであった。
「凄い」
隣にいたカーサがソレントの鱗衣を見回す。
「ヒビ一つ残っていない」
エウリュディケーも嬉しそうに微笑んだ。
「それでは失礼致します」
全員に再び会釈した時、彼女はカノンの方を見た。