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しかし、この不可解な事態を説明できるのは自分しかいないので、ソレントは物凄い形相で『とにかく最後まで喋らせる事!』と全員を脅迫し、今までの経緯を話した。
冥界での女神たちの試練と自分たちの置かれている立場。そして、この三日間は仮の身体である為に、不用意な戦いを避けねばならぬ事を……。 「アテナがそのような事を……」 カノンは厳しい表情になった。 「私はオラクルから出る事は許されない立場でしたが、多分闘士たちの魂を探すのは大変だったと思いますよ」 全員の間に沈黙が流れた。 イオが小さく笑いだす。 「アテナには完敗だな」 その言葉にアイザックも笑った。 「まったくだ」 全員が互いに顔を見合わせて笑いあう。 その時、神殿から一人の女性が現れた。 (テティス!) 全員、一瞬そう思ったが、それは全然違う女性であった。 ソレントはその女性を知っていた。 「エウリュディケーさん……」 今の彼女は懲罰の鎧をまとってはいない。ソレントはそれを見てほっとする。 そしてカノンもその女性を見知っているような気がした。 (どこかで……確か、冥界の……) 記憶が断片的に蘇り、彼は冥界の花畑で出会った女性を思い出した。 (半分石にされていた女に似ている) しかし他人の空似だろうと考えた。 「セイレーン。エウリュディケーってさっきの話に出てきた審判役か?」 イオの言葉にソレントは頷く。 彼女は全員に会釈すると、ソレントの元へ近づいた。 「セイレーン様、これをお受け取りください」 彼女は青い光をソレントの前に出す。 「何ですか?これは」 「女神ヘカテ様より、美しい調べのお礼だそうです」 一瞬、ソレントは警戒したが、直ぐにその考えを振り払う。 「ありがとうございます」 彼が手を出すと、青い光は彼の鱗衣の上を走るように駆けめぐり、その破損を見事に修復したのであった。 「凄い」 隣にいたカーサがソレントの鱗衣を見回す。 「ヒビ一つ残っていない」 エウリュディケーも嬉しそうに微笑んだ。 「それでは失礼致します」 全員に再び会釈した時、彼女はカノンの方を見た。 |
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