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海闘士側の話 1

ソレントは海底神殿の前で目を覚ました。
不思議なことに壊れている筈の神殿は、硝子のような質感で寸分違わずに存在していた。
(女神ヘカテの趣味か?)
辺りを見回すと、懐かしいメンバーが六人倒れている。
(……やはり起こすのは彼からにしよう)
ソレントは一人の男のもとに近づくと、いきなり起こして頭部の鱗衣を取り、彼の頬を拳で殴った。
「痛ッ!」
シードラゴンのカノンは何が起こったのかさっぱり判らず、目の前にいるソレントのことを呆然と見る。
「……セイレーンか?」
「そうですよ。とにかく他のメンバーを起こしましょう」
「何で俺はここにいるんだ?」
「とにかくみんなを起こして下さい!」
拳を握っているソレントの迫力に負けたカノンは、渋々立ち上がった。
ソレントとカノンの起こし方は強烈で、全員頬が赤くなっていた。
「ところで我々は青銅聖闘士たちに負けたんだよな」
バイアンは疑問を口にした。
「そうです」
ソレントが青筋を立てながら答える。
「それからの記憶が一切ない」
アイザックが首を捻った。
「それは無いでしょう。冥界に落ちたのですから」
ソレントの婉曲な表現に、カノン以外青ざめた。 でも本人は的確な表現だと思っている。
「なんだか神殿の様子が変だが、建て替えたのか?」
クリシュナの真面目なボケにソレントは苦笑した。
「海の支配権が一時、ポセイドン様から女神ヘカテに移ったんです。多分あの神殿も女神の管轄になったのだと思います」
どこから説明していいのか。彼は頭が痛くなってきた。
「随分、色々な事を知っているなぁ」
イオの言葉で、全員の視線はソレントに注がれる。
「何かやったんですか?」
カーサの言葉に彼はデットエンド・シンフォニーを吹きたくなった。