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「貴様、何者だ」 三人はパンドラを庇うように、エリスの前に立ちふさがる。 「待て、その者は敵ではない」 パンドラの説明にエリスは一言、 「現在は……」 と付け加えた。 「エリス、何かあったのか?」 パンドラは三人を押し退けて、エリスの方へ近づいた。 「何か?それはこれから起こる」 既にその手にあの白い杖はない。争いの女神は右手に槍を出した。 エリスの目が怪しく光る。 「冥王のいない今、冥衣の力が人間を蝕む様を見られるかと思っただけだ。 パンドラも気をつけないと、喰われるぞ」 パンドラは驚いてエリスと三巨頭たちを交互に見た。 「貴様、冗談も大概にしろ。」 ラダマンティスは傷の痛みも忘れて拳を握った。ミーノスもまた彼女の存在を警戒する。 アイアコスは、彼女を自分の背後に隠した。 「エリス!」 パンドラは展開の異常さに、どうしたら良いのか判らなくなった。 どちらが先手を取るかと言う緊張した時間が流れたが、いきなりエリスはその手から槍を消した。 「パンドラの大事な三人だ。今は私が引こう」 相手の戦意が急に消えた為、ラダマンティスもミーノスも拍子抜けした。 「だが、いずれその忠義の程を試させてもらう。 その時お前たちの手がパンドラの血で汚れていたならば、先程の言葉の代償を貰おう」 エリスはそう言うと、高笑いしながら姿を消した。 「何なんだ。あの女は!」 悔しそうにラダマンティスが呟く。 「あれは『争いの女神エリス』だ。ハーデス様の配下だった『タナトス』と『ヒュプノス』の妹神」 パンドラはやや青ざめた表情で答えた。その言葉に三人は絶句する。 「とにかく城へいこう。それにお前たちに言わねばならない事がある」 パンドラは呆然とする三人にそう言うと、ハインシュタイン城へと歩きはじめた。 「御意」 三人は一度パンドラに片膝をついて礼をすると、彼女の後を追った。 息を吹き返した森の空気は、限りなく爽やかだった。 |
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