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パンドラは明るい光に眩しさを感じた。 ゆっくりと瞼を開けるとそこには緑の木々の姿が見えた。彼女は森の中に倒れていたのだ。 「ここは!」 慌てて起きた時、彼女はそこで信じられない光景を見る。 「そんな……まさか……」 そこには美しい湖と緑に囲まれたハインシュタイン城が、陽の光を受けて輝いていたのである。 「まさか……どうして……」 自分は夢を見ているのか。彼女は自分の腰に下げている短剣を手に取るとじっと見つめた。 その時、藪が騒めき男が飛び出してきた。 不意討ちのようなタイミングだった為、一瞬パンドラの身体は動けなくなった。 「パンドラ様、お止めください」 男は彼女から短剣を取り上げたが、衝撃音と共に短剣はその手から離れ地面に落ちた。 「ラダマンティス!」 三巨頭の一人、『ワイバーンのラダマンティス』は一瞬苦痛に顔を歪めたが、パンドラを抱きしめるとほっとした表情をした。 「ラダマンティス、何かあったのか?」 「パンドラ様!」 藪から『ガルーダのアイアコス』と『グリフォンのミーノス』が現れる。 パンドラは呆然としながら、三人の顔を見比べた。 「パンドラ様、あの様な短剣で何をなさるつもりだったのですか!」 彼女は我に返る。 「愚か者!その剣は弟が私にくれた物だ」 彼女は短剣を拾おうと視線を下に移した時、ラダマンティスの右手から血が出ている事に気付いた。 「ラダマンティス、血が出ているではないか!」 ラダマンティスはパンドラに短剣を拾わせないように、その体をがっちりと抱いている。 「大丈夫です」 勇猛を誇る男は痛みを表に出すような事はしない。ただ、自分の女主人が安心するように薄く笑った。 「これで切ったのか?」 現場を見ていないアイアコスが拾おうとした時、短剣は彼の手を拒絶した。 「!」 アイアコスは思わず自分の手を見る。怪我こそしていないが、手のひらが赤くなっていた。 「判っただろう。その短剣は私にしか持てぬ」 ラダマンティスの腕の力が弱まったので、パンドラは急いで彼から離れると短剣を拾った。 「とにかく今のお主たちの身体は回復力が落ちている。不用意な事をして怪我をするでない」 彼女はそう言ってラダマンティスの手を掴むと、傷の様子を見た。 しかし、彼女は命令は出来ても手当をするという事をやった事がない。どうしたら良いのか判らず固まってしまう。 「パ……パンドラ様、大丈夫です」 「そうです。パンドラ様が気にかける事ではありません」 その時、頭上から女性の声が響いた。 『もう怪我人が出たらしいな』 パンドラはその女性の声を知っていた。 「エリス!」 争いの女神が三巨頭たちの前に現れた。 |
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