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闇の中の光 2

パンドラは明るい光に眩しさを感じた。
ゆっくりと瞼を開けるとそこには緑の木々の姿が見えた。彼女は森の中に倒れていたのだ。
「ここは!」
慌てて起きた時、彼女はそこで信じられない光景を見る。
「そんな……まさか……」
そこには美しい湖と緑に囲まれたハインシュタイン城が、陽の光を受けて輝いていたのである。
「まさか……どうして……」
自分は夢を見ているのか。彼女は自分の腰に下げている短剣を手に取るとじっと見つめた。
その時、藪が騒めき男が飛び出してきた。
不意討ちのようなタイミングだった為、一瞬パンドラの身体は動けなくなった。
「パンドラ様、お止めください」
男は彼女から短剣を取り上げたが、衝撃音と共に短剣はその手から離れ地面に落ちた。
「ラダマンティス!」
三巨頭の一人、『ワイバーンのラダマンティス』は一瞬苦痛に顔を歪めたが、パンドラを抱きしめるとほっとした表情をした。
「ラダマンティス、何かあったのか?」
「パンドラ様!」
藪から『ガルーダのアイアコス』と『グリフォンのミーノス』が現れる。
パンドラは呆然としながら、三人の顔を見比べた。
「パンドラ様、あの様な短剣で何をなさるつもりだったのですか!」
彼女は我に返る。
「愚か者!その剣は弟が私にくれた物だ」
彼女は短剣を拾おうと視線を下に移した時、ラダマンティスの右手から血が出ている事に気付いた。
「ラダマンティス、血が出ているではないか!」
ラダマンティスはパンドラに短剣を拾わせないように、その体をがっちりと抱いている。
「大丈夫です」
勇猛を誇る男は痛みを表に出すような事はしない。ただ、自分の女主人が安心するように薄く笑った。
「これで切ったのか?」
現場を見ていないアイアコスが拾おうとした時、短剣は彼の手を拒絶した。
「!」
アイアコスは思わず自分の手を見る。怪我こそしていないが、手のひらが赤くなっていた。
「判っただろう。その短剣は私にしか持てぬ」
ラダマンティスの腕の力が弱まったので、パンドラは急いで彼から離れると短剣を拾った。
「とにかく今のお主たちの身体は回復力が落ちている。不用意な事をして怪我をするでない」
彼女はそう言ってラダマンティスの手を掴むと、傷の様子を見た。
しかし、彼女は命令は出来ても手当をするという事をやった事がない。どうしたら良いのか判らず固まってしまう。
「パ……パンドラ様、大丈夫です」
「そうです。パンドラ様が気にかける事ではありません」
その時、頭上から女性の声が響いた。
『もう怪我人が出たらしいな』
パンドラはその女性の声を知っていた。
「エリス!」
争いの女神が三巨頭たちの前に現れた。