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光と共に 3

沙織は岩だらけの大地を見回す。
心の奥底で、目的のものが近いと感じている。 光は早い動きでくるくると、彼女の周りを回っていた。
「あっ!」
少し離れたところで、大地から金色の光が漏れている。
「あった!」
岩の中に埋もれている射手座の聖衣を見つけた時、沙織は再び涙ぐんだ。 震える手で金色の鍵を使い聖衣を解放する。 すると今まで一緒だった光が、射手座の聖衣に入り込んだのである。
「!」
柔らかな光が射手座の聖衣から零れた。
「えっ?」
そして聖衣は一度分解し、光の中から現れた青年の身体に装着された。沙織は呆然としながらその青年を見つめた。
「アテナ、大きくなられましたね」
声を掛けられたが、沙織は直ぐに反応出来ない。
夢にまで見た、会いたくても会えないと諦めていた、射手座のアイオロスがそこにいたからである。
「お怪我はありませんか?」
彼は片膝をついて優しい笑顔で沙織を見つめる。
「アイオロス……」
彼女は涙が溢れて、それ以上声が出なかった。
「はい」
彼の返事を聞いた時、沙織は堪えきれずに彼に抱きついた。
「アイオロス、アイオロス……」
「……」
「アイオロス、ありがとう。私を聖域から連れ出して、お祖父さまに逢わせてくれて」
その言葉にアイオロスの瞳が潤んだ。
「アテナ、ありがとうございます」
沙織は涙を拭うとアイオロスを立たせた。
「アイオロスで最後だから、第一の試練はこれで終わりよ」
そして彼の左手を握ると、オルクスへ歩きだした。
「アテナ、私がお連れいたします」
アイオロスは彼女を抱き上げようとしたが、沙織は慌てて断った。
「それは駄目よ。この試練はどこかで楽をすると、後で凄い罰則を喰らうの。 さっきもそれで審判役から注意を受けたのよ」
彼女は嬉しそうに青年の手を引っ張った。
「だから自分の足で帰ります」
彼女の誇らしげな表情に、アイオロスは眩しい存在を見るかの様に目を細めた。
「それにアイオロスにはいっぱい話したい事があるの」
「是非聞かせてください」
二人はゆっくりとオルクスへ向かって歩きだした。
そして冥界の大地は、少しずつ静かに元のガラス張りの様な状態へと変化し始めた。