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沙織は岩だらけの大地を見回す。 心の奥底で、目的のものが近いと感じている。 光は早い動きでくるくると、彼女の周りを回っていた。 「あっ!」 少し離れたところで、大地から金色の光が漏れている。 「あった!」 岩の中に埋もれている射手座の聖衣を見つけた時、沙織は再び涙ぐんだ。 震える手で金色の鍵を使い聖衣を解放する。 すると今まで一緒だった光が、射手座の聖衣に入り込んだのである。 「!」 柔らかな光が射手座の聖衣から零れた。 「えっ?」 そして聖衣は一度分解し、光の中から現れた青年の身体に装着された。沙織は呆然としながらその青年を見つめた。 「アテナ、大きくなられましたね」 声を掛けられたが、沙織は直ぐに反応出来ない。 夢にまで見た、会いたくても会えないと諦めていた、射手座のアイオロスがそこにいたからである。 「お怪我はありませんか?」 彼は片膝をついて優しい笑顔で沙織を見つめる。 「アイオロス……」 彼女は涙が溢れて、それ以上声が出なかった。 「はい」 彼の返事を聞いた時、沙織は堪えきれずに彼に抱きついた。 「アイオロス、アイオロス……」 「……」 「アイオロス、ありがとう。私を聖域から連れ出して、お祖父さまに逢わせてくれて」 その言葉にアイオロスの瞳が潤んだ。 「アテナ、ありがとうございます」 沙織は涙を拭うとアイオロスを立たせた。 「アイオロスで最後だから、第一の試練はこれで終わりよ」 そして彼の左手を握ると、オルクスへ歩きだした。 「アテナ、私がお連れいたします」 アイオロスは彼女を抱き上げようとしたが、沙織は慌てて断った。 「それは駄目よ。この試練はどこかで楽をすると、後で凄い罰則を喰らうの。 さっきもそれで審判役から注意を受けたのよ」 彼女は嬉しそうに青年の手を引っ張った。 「だから自分の足で帰ります」 彼女の誇らしげな表情に、アイオロスは眩しい存在を見るかの様に目を細めた。 「それにアイオロスにはいっぱい話したい事があるの」 「是非聞かせてください」 二人はゆっくりとオルクスへ向かって歩きだした。 そして冥界の大地は、少しずつ静かに元のガラス張りの様な状態へと変化し始めた。 |
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