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実際、その通りになって、天秤座・水瓶座と沙織は次々と見つけ、結局三人一緒に外部とオルクスの間を3往復した。 その時、彼女らは少しづつ言葉を交わしていた。 「パンドラって、あのハインシュタイン家の人だったんだ……」 沙織は隣りで歩いている女性の顔をじっと見た。 「知っているのか?」 「私、親戚の人にあったことがあるわ。それじゃぁパンドラのお父さんは鉄鋼王と呼ばれたあの人だったんだ」 「……」 「あっ、思い出させてごめんなさい」 「思い出すも何も、忘れたことの無い記憶だ。 父親の仕事については殆ど知らないが、優しい人だった」 パンドラは自嘲気味に笑った。 「おかしな話だ。それでも私はハーデス様を弟として愛いている。 私から全てを奪っていった張本人だというのに……」 その言葉に、沙織は暗い顔をした。 「……パンドラ、一つ聞いていい?」 「何だ?」 「神の勝手な思惑で自分の家族を全て奪われたのに、どうして神を恨まないの?」 沙織の脳裏に、優しかった祖父の顔が思い出された。彼もまた聖域の動乱で、自分の子供たちを全て奪われたと言っていい人生を送った。 それでも彼は沙織に優しかったのである。 「……どんな力を持っていても、その腕に眠る赤子を恨める訳が無いだろう。 今思えば、母は弟が『死の力』を持って生まれることを知っていたのかも知れない。 いつもお腹の中の弟に話しかけていた。 お姉ちゃんを守ってね。お母さんの事を忘れないでねって……。 父はそれを聞いて、いつも困った顔をしていた」 パンドラが持っていたのは水瓶座だった所為か、彼女は赤子を抱くように小さな聖衣を抱いていた。 「今頃思い出すとは、遅すぎたな。 もっと早くに思い出していれば、ハーデス様に伝えられたのに……」 彼女はそう言って腰にぶら下がっている短剣に触れた。 「その短剣は?」 「これはお守りだ」 パンドラはきっぱりと沙織に告げた。エリスも修正したりはしなかった。 そして会話の性質はややズレてきた。 「アテナの聖闘士は全員、忠義の者みたいだな。先の戦いでそれがよく分かった」 パンドラの感想に沙織はどう答えて良いのか戸惑った。 「そ、そうよ」 しかし、心のどこかで嘘ではないが肯定のし難さを感じていた。 「そうか、それは何よりだ。冥闘士たちは私が言うのもなんだが、あまり私の言うことは聞かない」 「仕方ないわよ。人が十人いれば十通りの思惑があるんですもの。 残念だけど私だって、どこまで聖闘士たちの事を知っているのか不安になってくることがあるわ」 「そうなのか?」 「戦闘能力はみれば判るけど、その他がねぇ」 沙織は溜息をついた。 |
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