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荒野を行く 2

だが、三人は審判役から注意を受けることになってしまった。
「先程のセイレーン様の演奏は、協力と見なします。
本来なら海闘士たちはもう一度隠すつもりでしたが、その知恵に免じて今回は不問に致します」
三人とも懲罰の鎧を見たが、色は変わらない。
「ですが、違反は違反。少々ペナルティとして、外の様子を変更させて頂きました」
エウリュディケーは沙織に近づくと、小さな光を彼女の前に出した。
「外は暗いですから、明かりをお持ちください」
光は沙織の前で漂う。触れようとすると離れるので、放っておくようにと説明された。
「それではお気をつけて……」
審判役の微笑みは、限りなく優しかった。

「これは凄いな」
外へ出た瞬間、パンドラはそう呟いた。
「やっぱり楽をすると反動が大きくなるらしい」
元凶のエリスは妙な納得をしていた。沙織に至っては、声が出せなかった。
冥界の大地は大きな岩が所狭しと大地を覆い、今度は岩の上を飛び歩くような状態だったからだ。
「とにかくエリスには絶対に聖衣探しを手伝ってもらうわ」
今度は沙織がエリスの腕を掴んで、勇ましく歩きはじめる。
(別に暗くはないが……)
パンドラは冥界の空を見て、何故沙織に光が渡されたのか不思議に思ったが、その考えは沙織の自分を呼ぶ声に中断された。
(ユリティースが酷い事をするわけがないか……)
彼女は慎重に岩の上を歩きはじめた。

「やったぁ〜」
冥界に沙織の歓声が響きわたる。 最初に発見されたのは、三分の一の大きさの獅子座だった。
「喜んでいないで、早く解放してやれ」
思いっきりはしゃいでいる沙織を見て、エリスとパンドラは呆れていた。
「私の探し方が悪いのかと思って、結構動揺していたのよ!」
沙織は聖衣をエリスに渡す。
「さぁ、次に行きましょう!」
「ちょっと待て、私はシードラゴンを探させて貰うぞ」
争いの女神は反論をしたが、沙織が腕を掴んで離さない。
「ちょっとくらい手伝ってくれても良いじゃない!」
ちょっとでは済まない予感を、エリスは感じていた。