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「パンドラ…様…。ご心配を……」 「もういい。喋るな!」 その時二人のいる場所の大地が揺れた。 「パンドラ様……、逃げて……」 「断る!其方を置いて立ち去るなど、たとえ神の言葉でも聞かぬ」 大地はますます激しく揺れ、彼女らを取り囲むように三つの大岩がそそり立った。 「……これは……」 パンドラは岩を見て、目を見開いた。冥衣が半分埋められていたからである。 「まさか……」 どの冥衣も見覚えがあった。 「何故、三巨頭の冥衣が……」 「お前が呼んだからだ」 第三者の声にパンドラはぎょっとした。 岩の影から現れたのは、『死』と『眠り』の妹神エリス。 「私が呼んだだと……」 「そうでなければ、三巨頭はお前を見つけられない」 エリスは二人に近づくと、パンドラの目の前に黒い鍵を出した。 「まずはこの鍵でこの者たちを解放しろ」 彼女は鍵を受け取る。 「女神エリス……」 「冥王を呼んだのは、エウリュディケーか?」 その問いに儚げな審判役は弱々しく微笑んだ。 「冥王に…頼まれた…のでは…ありません。自分で……」 「情に流され過ぎだ。冥王は恩に着るような男ではないぞ」 「構いません……。私はやりたいと…思った事を……したまでです」 彼女のその言葉に、エリスは満足そうにな笑みを浮かべた。 パンドラの方では岩にある鍵穴に鍵を差し込んで、次々と冥衣を取り出している。 冥衣は取り出された後、三分の一程の大きさになり、岩は粉々に砕け散った。 「全部、出したぞ。これからどうするのだ」 「とにかく、私はエウリュディケーを背負う。パンドラは済まないが、杖を持ってくれ」 エリスは無理やりパンドラに白い杖を渡した。 彼女はそれを受け取ると、もう一つの黒い杖も拾い上げた。 その時、二つの杖が震えた。 「これは!」 杖はいきなりパンドラの手を離れると、歩くのも困難な大地の上でお互いがパートナーのように回りはじめた。 『懲罰の鎧よ。其方の正義に情は在りしか?』 |
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