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思慕 4

冥王ハーデスが女神アテナに倒されて冥界が崩壊を始めた時、ユリティースは花畑で恋人の為に祈りを捧げていた。
自分の為に聖域を裏切って、冥界までやってきてくれた恋人のオルフェ。彼の為に祈る事だけが、自分に出来るたった一つの事だった。
(オルフェ、ありがとう。
大好き、大好き、大好き。だからこそ私を忘れて……。 貴方は光の元にいるべき人なのだから。
あぁ、女神アテナ、オルフェを許してください。罰するのなら、彼を手放せなかった私を罰してください。 私は永遠に罪人として責め苦を受けても構いません。
だからオルフェを……、愛しい光を、貴女の慈悲で元の世界へ連れていってください。)
そして石となった身体が崩れていく最中、古の女神と彼女は出会った。
そして彼女は太古の記憶を取り戻す。自らの真名はエウリュディケー(広く裁く) 女神ヘカテの側近。
世界のバランスが不安定になった時、太古の女神は大神ゼウスに請われてその力を発揮する。それを補佐する役目を持った精霊。
(オルフェ……、もう二度と会えない大好きなオルフェ。どうか……)
女神ヘカテは彼女に役目を与える。古の約束事により、冥界に下りて神々の主だった闘士たちを復活させてくるように。
しかし、冥界で彼女を待っていた女神たちは全員の復活を希望した。
(この鎧に魂まで吸い尽くされようとも、私は最期まで審判役をやり遂げる。 試練は最後まで行われるのだから…。他の精霊たちに任せるわけにはいかない……)

エウリュディケーはパンドラの腕の中で目を覚ました。

「ユリティース!気がついたか」
パンドラは溢れる涙を拭おうとせずに、彼女を再び抱きしめる。