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その光は女神たちの上空で一度旋回すると、少し離れた場所で人の形をとった。 そこには一人の女性が立っている。 「女神エリス、女神アテナ。冥界へようこそ。 私は女神ヘカテの側近をしている者で、名をエウリュディケーと申します」 恭しく礼をする女性。 沙織はエウリュディケーを見て、何かを思い出しそうになった。 何処かでエウリュディケーを見ている。会ってはいない。何処かで見ているのである。 (確か…あれは…) 自分の横では琴座のオルフェウスがエウリュディケーを見ている。 その瞬間、沙織は思い出した。 「貴女はもしかしてユリティースと呼ばれていなかった?」 冥王との戦いで、沙織は眠りの神であるヒュプノスに捕らえられた。 そして人の血を吸って白から真紅に変わるという、エリュシオンに伝わる聖なる大甕に閉じ込められていた。 その時、彼女は断片的に聖闘士たちの戦いを見る事が出来た時があったのだ。 黄金聖闘士たちに引けを取らないと噂されていた白銀聖闘士、琴座のオルフェの恋人とそっくりの女性が自分の目の前でヘカテの側近と名乗っている。 しかしエウリュディケーはそれを否定した。 「女神アテナ。私はそのような名であった事はありません」 だが、その表情は一瞬だけ寂しそうであった。そして彼女の姿をオルフェウスはじっとを見つめている。 「美しい……」 それを聞いた魔矢はヤンの脇腹を肘でつっついた。 「オルフェウスのやつ、何だか怪しい事になっているぞ」 しかし、ヤンは冷静に答えた。 「関わらないほうがいい」 何やら妙な雲行きになってきたようである。 |
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