|
|
| |
争いの女神の話は驚くべきものだった。 「十二人の黄金聖闘士・海闘士の七将軍・冥闘士の三巨頭が全員その守護世界にいない場合、神々は条件付きで彼らを蘇生させることにしている」 「それは本当ですか!」 「エリス!本当なのそれは!」 彼女は含みのある笑みで頷く。 「これは今まで一度も行われたことのない、それこそ死んでいるかのような約束事。そしてこれを知っていたのは大神ゼウスと海皇と冥王。そして私の母と女神ヘカテ様のみ」 「エリスの母親って言ったら、『夜』の女神ニュクス様…」 「でも、何故それを想定した約束事があるのですか」 ソレントの問いはもっともである。 「私の母は予言の力を持っている。その母が今回の事態を神話の時代に予言していた。 そして今や冥界も海界も地上もボロボロで、こんなところを『オリンポス神族に敵対する者たち』に攻撃されたら、天界のみでどこまで戦えるか怪しい話だからだ」 「そのような敵に心当たりがあるのですか?」 「争いの女神にその問いは愚問」 エリスはあっさりと答えた。 「そこで三界に絶大な力を持つヘカテ様が、そのような事態が発生した時は二十二人の闘士を復活させてくれる事になっている。 そこまでの闘士が全滅という戦いは、大抵神もまた無事では済まないということで、ヘカテ様がその役目を負う事になったらしい ただし、先程も言ったように条件が付くが……」 エリスは楽しそうに笑う。この女神のトラブル好きは今に始まったことではないが、何故楽しいと思えるのか沙織には判らなかった。 その時、今までなかった風が急に吹く。 「むっ」 琴座のオルフェウスが遠くのほうをじっと見ている。 「エリス様、来ます」 「勝負の始まりだな」 オルフェウスの視線の先には赤い光が輝いていた。 |
|
|