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試練の始まり 1

かつて二人が敵対していた時、エリスは五人の聖闘士を死者の国から甦らせて、沙織と青銅聖闘士たちを散々苦しめた。
メンバーは、オリオン座のジャガー・南十字星座のクライスト・琴座のオルフェウス・楯座のヤン・矢座の魔矢。
あの戦いで青銅聖闘士たちが勝利したのは、奇跡としか言い様がなかった。
「エリス、まさかヘカテ様に……」
「そんな物騒なことはしない。堂々と返してもらう」
「……でもどうして貴女がそんなことをするの?」
「それが私の存在理由だからだ」
沙織は首を傾げたが、そういう答え方をされると詳しく尋ねられない。
何故地上を守るのかと尋ねられれば、やはり自分も同じように答えるであろう言葉であったからだ。

エリスは冥界の暗い空を見上げると、右手に黄金のリンゴを出した。 それは光り輝くと、地平線のある一点に光が現れる。
「お待ちかねの人物が来た」
そしてその光は五つに別れ、そしてエリスたちの前に舞い降りた。
「ああっ!!!」
そのうちの一人、体格の良い南十字星座のクライストは一人の青年を肩に担いでいた。
「確かこの方はセイレーンのソレント!」
その少年はポセイドンの海闘士である証の鱗衣を身にまとっている。 だが、その鱗衣はあちこちがひび割れたり砕けたりして、無残な姿を晒していた。
「エリス様、連れて参りました」
矢座の魔矢はソレントのマスクとフルートを持っていた。
「ご苦労、ここに降ろしなさい」
そしてエリスは黄金のリンゴを、傷ついた体で大地に横たわっているソレントに与えた。
体が淡く輝いた後、彼は目を覚ました。
「ここは……」
エリスがソレントの顔を覗き込む。
「冥界へようこそ。海皇の将軍」
しかし、ソレントの目に入ったのは沙織の方だった。
「ア、アテナ…」
その瞬間、自分の存在を無視されたエリスは、杖を持ち替えて右手に槍を出す。
「エリス様、お止めください」
オリオン座のジャガーが即座にエリスの右手から槍を取る。
「ソレント。貴女をここへ呼んだのは、私ではなくこちらの『争いの女神エリス』です」
そう紹介されてようやくソレントはエリスの事を見た。
「……争いの女神が何故、私は確かジュリアン様を助けようとして鱗衣を…」
その言葉に沙織が今度は怒った。
「エリス!まさかソレントをここへ連れてくる為に、ジュリアンを巻き込んだのですか」
だが、楯座のヤンはそれを否定した。
「あの青年は無事です。一応、近くの教会に預かって貰いました」
それを聞いてソレントはほっとした。信じていいのか不安は確かに残るが、自分が希望していた言葉だったからである。
「それでは、私をここに連れてきた理由を教えてもらおう。くだらない理由なら只では置かない」
魔矢がソレントにマスクとフルートを渡す。彼は驚きながらもそれを受け取った。
「そうだな、こちら側の役者は揃った。実は今から女神ヘカテととある『賭け』をやる事にしている」
「賭け?」
沙織とソレントは顔を見合わせた。