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古の女神 1

「こ…これは……」
光が消えたと思い、沙織が目を開けてみる。
すると、今まで亀裂が走り岩が突き出し、その場にいる事も危うかった冥界の地が、磨かれた黒曜石のような大地へと変貌していた。
そして、その世界に沙織は一人きりだった。真っ青になって自分の両手を見る。
装着していたアテナの聖衣は消え、杖になっていたニケも楯も消えていた。
そして彼らもいなかった。
「星矢!」
周囲を見渡す。
「瞬!氷河!紫龍!一輝!」
沙織は叫んだが、辺りは何の変化も見せない
「いったい何が……」
その時、金色の光が沙織の目の前に漂ってきた。
「久しぶりだな。アテナ」
その光は人の形になると、禍々しくも美しい女性を出現させた。
右手には三匹の絡まる蛇をデザインした白い杖が握られている。
「…エリス……」
沙織は以前敵対した『争い女神』の登場に、驚きを隠せない。
「どうして貴女がここに……」
するとエリスは妖しい笑みを沙織に向けた。
「遊びに来た。 この様子から見ると、冥界の支配権が冥王ハーデスから女神ヘカテ様に移ったな」
エリスは楽しそうに足元を見た。
鏡のような大地には、二人の女神が映っている。
「ヘカテ様って、まさかあの古の女神である……」
「ご明察」
そう言ってエリスは沙織の横を通り抜けた。
「待って、エリス」
沙織は慌てて彼女の後を追った。
「何故ヘカテ様なの?」」
「……。アテナは気付かなかったのか?」
エリスは振り向くと呆れた様な顔をした。