「こ…これは……」 光が消えたと思い、沙織が目を開けてみる。 すると、今まで亀裂が走り岩が突き出し、その場にいる事も危うかった冥界の地が、磨かれた黒曜石のような大地へと変貌していた。 そして、その世界に沙織は一人きりだった。真っ青になって自分の両手を見る。 装着していたアテナの聖衣は消え、杖になっていたニケも楯も消えていた。 そして彼らもいなかった。 「星矢!」 周囲を見渡す。 「瞬!氷河!紫龍!一輝!」 沙織は叫んだが、辺りは何の変化も見せない 「いったい何が……」 その時、金色の光が沙織の目の前に漂ってきた。 「久しぶりだな。アテナ」 その光は人の形になると、禍々しくも美しい女性を出現させた。 右手には三匹の絡まる蛇をデザインした白い杖が握られている。 「…エリス……」 沙織は以前敵対した『争い女神』の登場に、驚きを隠せない。 「どうして貴女がここに……」 するとエリスは妖しい笑みを沙織に向けた。 「遊びに来た。 この様子から見ると、冥界の支配権が冥王ハーデスから女神ヘカテ様に移ったな」 エリスは楽しそうに足元を見た。 鏡のような大地には、二人の女神が映っている。 「ヘカテ様って、まさかあの古の女神である……」 「ご明察」 そう言ってエリスは沙織の横を通り抜けた。 「待って、エリス」 沙織は慌てて彼女の後を追った。 「何故ヘカテ様なの?」」 「……。アテナは気付かなかったのか?」 エリスは振り向くと呆れた様な顔をした。 |