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海よりも深い青
その27 |
そして異次元牢の傍で空間そのものを歪ませたのである。
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カストールは自分の周囲が先程とは違い、何処かの廃墟にいる自分に気が付いた。 (ここは動かない方が良いな……) 薄暗い中、目を凝らしてみると部屋には海将軍たちの鱗衣が安置されている。 (……ここは海底神殿なのか!) それにしては人の気配がない。 だが、大きな揺れが一度だけ起こった瞬間、彼は誰かが部屋に近付いて居る事を知った。 (……) シードラゴンの鱗衣が何故か困惑している事が判った。 そして部屋に現れたのは……。 一瞬、弟のポリュデウケースなのかと思った。 だが、相手のその力を身体に受け、瞳の中に何か真っ直ぐな思いを見出した時、カストールは相手もまたシードラゴンの主である事を知る。 自分が心の何処かで望み続けた、全ての柵(しがらみ)を切り捨てた存在。 (これ程の意志があれば……) 女神テティスを救う為だといって彼女の記憶を操作した時、彼は自分の中の大事な想いを潰した。 もう女神は自分を見ても何とも思わないだろう。 |
(それでも、いつか……)
目の前に閃光が走り、周囲の風景は岩が崩れるかのように砕けていった。 カストールは思わずよろけてしまったが、何とか持ちこたえる。 |