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海よりも深い青 その28

「異次元牢が壊れるぞ!」
誰かの声が耳に届く。
多分、傍にいたのがシーホースの海将軍だったので、彼だと考えた。
でも、何処か遠く感じたので本当に彼の言葉なのかは、カストールには断言出来ない。
どうでも良い事ではあるのだが……。

★★★
空間を切り裂くかのように閃光が縦横無尽に走る。
その余波で牢が粉々に砕け、中なら少々ズタボロの海将軍が現れた。
「カストール!!」
久しぶりに会う仲間に、カストールは揉みくちゃにされる。
怒って居るわけではない事は判るのだが、かなり手荒い感謝の意思表示だった。
★★★
(あの謎の海底神殿での出来事は、これから起こり得る出来事なのだろうか? )
カストールは思い出す度に首を傾げてしまう。
「お前なら、あの男に会えるだろう」
そう言って彼はシードラゴンの鱗衣の胸部を軽く叩いた。
シードラゴンの鱗衣自身、困惑しているような気配がある。
「……もし会ったら……」
そう言った後、カストールは沈黙してしまう。
あんなにも強烈な魂の輝きを持った男を主にしたら、聞き分けの良過ぎるシードラゴンの鱗衣は確実に振り回される。
もしかすると向こうは、シードラゴンの鱗衣以外の闘衣をまとえる資質の持ち主かもしれないのだから。
「……もし会って主と決めたら、誰が何といっても意地を通せ。
でないと、別の闘衣に取られるぞ」
今の主の言葉に、シードラゴンの鱗衣は、ますます困惑してしまった。
★★★

後にシードラゴンの鱗衣はカノンという青年を主と決める。
そして彼に従い、彼が聖域に戻るまで、たとえ海皇の三叉の戟を前にしても彼から離れなかった。
戦乱が終わり、静かになった深い蒼の世界から彼を見送る。
自分の役目は終わったと思ったからだ。

でも、彼は再び自分の主となった。
今度は一回りも二回りも大きな存在となって……。

冥界の闇を駆け抜けた闘士。自分だけの至宝。
だけど双子座の聖衣をまとう彼は、正直言って見たくはない。
すごく悔しいから。
それでも今度女神様に会う事が出来たら、自分の主は凄い闘士だと報告したいと思う。

この時、シードラゴンの鱗衣には妙な予感があった。
もしかすると実際に報告が出来て、パラス様は
「説得するの大変だったのよ」
と、笑ってくれる気がするのである。

〜 了 〜

★★★★★

〜 後書き 〜

約1ヶ月間、番外編に集中!
キリリクがこんな風になりました。
一年間、お待たせしてコレというのも
何か問題がありそうです。


リクエストを下さった 迦陵さんへ

結局、
シードラゴン×テティス度が低くてスミマセン m(_ _;m