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海よりも深い青 その26

二人の黄金聖闘士たちは海皇に謁見もせずに聖域に帰って行く。
牡牛座の黄金聖闘士が天上界の使者を肩に担ぎ、牡羊座の黄金聖闘士が使者の持っていた『黄金の短剣』を手にしていた。
どうせロクでもないモノであることは判っていたが、さりとて勝手に処分する事も出来ず、聖域が一応預かる形になった。
女神パラスが安全圏にいる以上、聖域で保管していた方が逆に女神アテナが安全であろうという判断もある。
一応使者は聖域に返したが、居る筈のない天上界の闘士達をどうするか。
海将軍達には頭の痛い問題が残された。

★★★
「さて、貴方達もこのままというわけにはいかないだろう」
海底神殿内が一段落ついた頃、クリシュナとカーサは他の海将軍達に呼ばれた。
確かにこのままというわけにはいかないが、どうやったら戻れるのか。
その回答を持っていたのはカストールだった。

「私がゴールデントライアングルで元の時代に戻そう」
シードラゴンの鱗衣をまとう最年少の海将軍は、二柱の女神をネーレイスたちに送り届けるという役目を立派に果たしたお蔭なのか、以前よりも一層大人びた顔つきになっていた。
そして嬉しい事に、近いうちに海妃アムピトリーテが海底神殿に戻ってくるという話が伝わっている。
今度こそ自分達の時代のクリュサオールとリュムナデスの海将軍を異次元牢から出して海妃を出迎えなくてはならない。
「……そんな事が出来るのか?」
「やった事はないが、何とかなるだろう」
あまりの返事にクリシュナとカーサは逃げ出したくなったが、それを他の海将軍達がガッチリと脇を固めて捕らえる。
「別れの挨拶もあるだろうし、呪術の影響がある異次元牢の傍の方が都合がいいな」
何の別れの挨拶だと未来から来た二人の海将軍たちは騒いだが、既に他の海闘士たちは感謝の敬礼して見送っている。
★★★
「それでは、もう思い残す事は無いか?」
不穏な確認の言葉。 異次元牢に閉じ込められている初代達が宥めなければ、彼らはハッキリ言って暴れたくなっていた。
「では、行くぞ」
「ちゃんと元の世界に送れよ!」
カーサが最後の足掻きのように怒鳴る。
しかし、カストールは
「努力はするが、途中でより大きな時空の歪みがあったら、そっちに引き寄せられる」
と、平然と答えてゴールデントライアングルを発動させた。

悲鳴が聞こえた時、見送る側の海将軍達は心の中で色々と詫びの言葉を呟いてしまった。
★★★