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海よりも深い青
その25 |
彼は女神の倒れそうな身体を支えながら、耳元で囁く。 |
神殿の外は既にクラーケンの海将軍と牡羊座の黄金聖闘士しか人の気配はなかった。 巻き込まれ傷ついた海闘士たちもいたが、それ以上に被害を被ったのは居る筈のない天上界の闘士たち。 彼らは海底神殿の傍にある牢屋に放り込まれていた。 「時間切れだ」 いきなり二人の間に突き刺さる黄金の槍。 お互いに相手しか見えていない状態だった闘士たちは、直ぐさま拳を引っ込めた。 気が付くと少し離れた所でクリシュナが立っている。 「決着をつけられなかったという事は、腕が鈍ったか……」 牡羊座の黄金聖闘士は、そう言って神殿の方へ歩き出す。 「……」 「少しは役に立ったか?」 その言葉にクラーケンの海将軍は目を見開いた。 「……すまない……」 クラーケンの海将軍は彼を利用した事を素直に謝罪したのだが、相手の反応は意外なものだった。 「……パラス様に恩義を感じているのは海闘士だけではない。 ただ、我々はこういう形でしか、あの方の役には立てない。 だから自分に出来る事をしたまでだ」 女神アテナの親友にして海皇の孫娘。 少なくとも今まで大々的に海世界と争いを起こさずに済んだのは、女神パラスの力に負う所が大きい。 「……ところで、あの娘はどうしている」 牡羊座の言いたく無さそうな口調にクラーケンの海将軍も苦笑いをした。 「元気だ。 以前よりも落ち着いてきている」 すると彼は 「……そうか……」 と呟くと、今度は振り返りもせずに神殿へと歩いて言った。 |
しばらくして海底神殿へ現れた海皇は、神殿内の様子を知っていながらも、 『霊廟の封鎖はしばらく延長する』 と言っただけだった。 この言葉にセイレーンの海将軍は逆に不安を覚えてしまう。 すると海皇は機嫌が良かったのか、少々多弁になっていた。 『海の者ゆえ荒っぽいが、悪意は無いと天上界に言っておいた』 そう言い残し、海闘士たちの主は再び気配を消してしまう。 セイレーンの海将軍は深々と頭を下げた。 |