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海よりも深い青 その22

ほとんどの侵入者が排除され、神殿内は落ち着きを取り戻し始めていた。
シーホースの海将軍は霊廟内を一瞥した後、他の様子を見る為にその場から離れる。
天上界の使者は静かに目的の場所に近付いた。

柩の前には人魚姫の鱗衣。
天上界の使者はそれを避けると柩の蓋を開けた。
「何っ!」
柩の中に居たのは、そこに居る筈の無い者。
その瞬間、彼は振り上げようとした短剣を落とし、その場に倒れた。
柩の中から出てきたのは、リュムナデスの海将軍カーサ。
「ご苦労だったな」
彼は柩の蓋を閉めると、人魚姫の鱗衣を再び乗せる。
『……』
人魚姫の鱗衣は、かなり不機嫌らしかった。

★★★
「さすがは海将軍だ」
拍手と共に称賛されたので、カーサは一瞬警戒体勢を取る。
だが、そこに居たのは牡牛座の黄金聖闘士。
自分の知っている豪快な男を思い出したのと、その雰囲気から敵意が感じられなかったので、彼はそのまま放っておく事にした。
「リュムナデスの海将軍殿。私はこの霊廟に入る権利はない。
すまないが、天上界の使者を引き渡しては貰えないか?」
非常に礼儀正しい言い方が、より一層自分の記憶にある男を思い出してしまう。
カーサは少しだけイラついた。
「断るといったら、どうする」
「その者は天上界からの使者だ。 一緒に来た以上、我々は連れて帰らねばならない。
貴方は霊廟を血で汚さないように気をつけていたのだ。
ならば不名誉な事で主の名を貶める事はしないと信じている」
痛い所を付かれて、カーサは苦々しい表情をした。
侵入者は本来居るべき存在ではないのだからどう料理しようと勝手だが、天上界の使者は公的な名代なのである。
来なかったという話では済まされない。
「見張り役なら、ちゃんと縄で縛っておけ!」
刺客を清浄なる場所に居続けさせるのも許しがたい話しなので、彼は相手の襟首を掴むとそのまま霊廟の外へ引きずり 出す。
そこへシーホースの海将軍が、霊廟へ駆けつけて来た。
★★★