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海よりも深い青 その21

カストールの身体をまとう青き光。
シードラゴンの鱗衣は自分が呼ばれた事を嬉しく思った。
自分の主は此処にいる。 女神パラスが連れてきてくれた自分だけの至宝。
そして若き海将軍の方にも、シードラゴンの鱗衣の思いが判った。
何者にも負けはしない。
彼らは敵ならば速やかに排除すべく、その者の所へ駆け出す。

★★★
闘争の気に引きずられたのか、血の匂いが呼んだのか。
たくさんの海の魔獣が何かを狙っていた。
海は広大であるがゆえに、海闘士たちでも把握しきれない異形の者達が居る。
倒すことが出来ず、封印という形で拘束している存在も多かった。
今、目の前で暴れている魔獣はその中の一種なのかもしれない。
海流が乱れ、圧迫されるような魔獣たちの攻撃的な咆哮が轟く。
黒い翼を持つ闘士は、光を胸に抱えて魔獣達の攻撃を交わしていた。
その様子を見た瞬間、カストールは必殺技を魔獣たちに向かって放った。
そしてカストールの存在に気が付いた相手も、彼に向かって何かを叫び技を繰り出していた。

「!」

お互いにその技を僅差で避ける。
一瞬のうちに黒い翼を持つ闘士を襲っていた魔獣たちは異空間に吹き飛ばされ、カストールの背後では別行動していたら しい魔獣が体液を海に撒き散らして海底の岩盤に倒れた。
★★★
海世界でこれ程の力を持つ闘士。
初めて見る闘士だが、その正体は直ぐに判った。
「ワイバーンのラダマンティス殿……」
力ある闘士たちが同じ場所に居るのが原因なのか、周囲の海流が小さな光りを放つ。
「冥妃様をあの方のもとへ案内してもらいたい」
表情を変えずに相手は言う。
しかし、カストールはどちらの意味に取れば良いのか一瞬迷った。
すると相手の背後に周囲の光りが集まりだし、其処に少女の姿が現れる。
少女はカストールに、神殿から脱出した友に会わせて欲しいと言う。
冥妃ペルセポネは何もかも知っているようだった。
★★★