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海よりも深い青 その15

神殿の最深部では、セイレーンの海将軍が海皇の不在に困惑していた。
何度呼びかけても、返事が無いのである。
「冥妃様が来られると言うのに……」
生憎、海妃アムピトリーテはパラスの一件で父神の所に行ってしまい、その神殿の一室から出てこない。
海皇はそれを聞いて放っておけと命じたので、今更呼びに行く事も出来ない。
彼は女神テティスのみならず海皇までも探さなくてはならないのかと考えて、頭が痛くなってしまった。

★★★
異次元牢から戻ってきた4名の海将軍が海底神殿に戻ってきた時、ちょうどスキュラの海将軍が廊下を駆けて来る。
「客は到着したのか?」
「外はどうなっている!」
二人の海将軍の問いかけは、ほぼ同時だった。
スキュラの海将軍の何か焦っているような問いかけに、彼らはお互いに顔を見合わせる。
「えっ……、やたらと海闘士以外の闘士が周囲に居たから、もう客が来ていると思って気配を消しながら戻ったのだが……」
その返事に相手は驚く。
「やはり奪いに来たのか……」
呆然とする彼の肩をクラーケンの海将軍が揺さぶる。
「どういう事だ?」
そこで彼は女神テティスの願いとカストールの決意を話す。
彼らの表情が険しくなり、全員がお互いの目を見て頷きあった。

そして神殿の最深部に居たセイレーンの海将軍に事情を話す頃、海底神殿に天上界と聖域から弔問客がやって来た。
★★★
「調べたところ、天上界はかなりの闘士を配置している。
その代わりに聖闘士は、最初から牡羊座と牡牛座しか居ない」
スキュラの海将軍は、闘士達の詳しい配置をカストールに伝える。
「まだ、ペルセポネ様が来ていないので、それを理由に神殿の入り口にある部屋に案内しました」
一緒に来たセイレーンの海将軍の説明に、最年少の海将軍は頷いた。

実際、冥妃よりも先に霊廟に入れるわけにはいかないと言われれば、天上界の使者と黄金聖闘士たちは待たざるを得ない。
女神ペルセポネが来るのが判って先に霊廟に近付くのは、正直言って冥界側の心証を悪くする。
これは冥王が冥妃を溺愛しており、他の存在が彼女を軽く扱う事を未遂だったとしても嫌うから。
そして彼らも、その前に海皇に拝謁したいとは言わない。
そもそも海皇は機嫌が悪いと、天上界の使者であろうが女神アテナの名代だろうが叩き出す事を平気でやりかねない。
全ては冥妃が来てからの話なのである。
故に、海将軍達の行動が相手に不審がられる事は無かった。
★★★