INDEX

海よりも深い青 その14

テティスは鱗衣をまとっていないカストールを味方だと判断したらしく、彼に促されて立ち上がる。
「カストール。正気か!」
スキュラの海将軍は怒鳴ったが、彼の決意は固かった。
「……もしかすると聖域か天上界はパラス様を奪いに来るのかもしれない……」
「何だと!」
「狙いは女神アテナに対して絶大な脅迫材料であるパラス様の入手。
そうは考えられないか?」
「何を言っているんだ……」
「奴らはパラス様が海底神殿の霊廟で眠っているという事を、今の女神アテナには知られたくはないだろう。
あの方がどんな反応を示すか、今は計算が出来ない。
だが、正気に戻られれば、話は変わってくる」
カストールの言葉にスキュラの海将軍は黙ってしまった。
納得してしまったからである。
「……聖闘士が女神アテナの為に、パラス様という不安材料を消しに来ても奇怪しくないな」
相手の言葉にカストールは表情を曇らせた。
それは絶対に無いとは断言が出来なかったからだ。
彼ら聖闘士たちは女神アテナの為なら、どのような罪でもかぶるだろう。
それがより一層、自分達の大切な女神を追い詰める事になろうとも……。

★★★
「後でそのような事が無いと判ったのなら、どんな処罰でも受ける。
だが、万が一奴らに奪われたら、それこそ取りかえしがつかない」
最年少の海将軍の真剣な眼差しに、スキュラの海将軍は溜息をついた。
「ならば早く海底神殿から脱出させよう。
客が来てからでは難しくなる」
スキュラの海将軍は他の海将軍たちに知らせておくと言って、部屋を出た。
★★★
「大丈夫なのですか?」
テティスに問われてカストールは頷く。
「大丈夫です。 彼らもまたパラス様の味方です」
その返事にテティスは嬉しそうに笑う。
彼は再び心が痛んだ。
以前のテティスなら、このような反応はしない。
だが、それを悲しむ時間はなかった。
★★★