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海よりも深い青
その12 |
「この事を正式に海皇様の耳に入れば、海皇様はテティス様を咎めなくてはならないし、姉である海妃様の立場が悪くなる」
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カストールは、まだ自分が確認していない場所を走る。
女神が術を使って自分の姿を隠しているのは、他の闘士たちが見つけられないという事で確実となった。 こうなると幾ら宿命として海闘士になったとはいえ、基本能力は普通の人間である部下達には手に余る。 彼は神殿内の廊下を走り続けた。 (だが、俺にだけは姿隠しの術など何の意味も持たない) 彼はそのうち、ある部屋で異様な雰囲気を察知した。 |
「ならば女神に尋ねてみる事だ」
クリシュナの静かな口調。 異次元牢全体が、ガタガタと揺れた。 相手は動揺している。 「クリシュナ殿!」 彼の言葉にクラーケンの海将軍は驚く。 しかし、クリシュナは気にせずに言葉を続けた。 「この海世界を守りながら、女神を探し出すのだ。 今と同じような宿命の下に女神が生まれていれば、命を懸けてその宿命から救い出す。 居る筈が無いと思うのなら、居ないという証明をしなくてはならない。 それまではどんなに辛くとも海将軍としての責務を全うするのだ。 逃げてはならない。 これは気が遠くなる闘いだ。 何しろ自らの運命との闘いなのだから。 だが、それくらいの事何でもないだろう」 初代クリュサオールの海将軍は沈黙する。 クリシュナは彼が先程よりも落ち着きを取り戻した事を知った。 もしかすると彼は自分の怒りを受け止める敵が欲しかっただけかもしれない。 (それでもクリュサオールの鱗衣が選んだ主なのだ。 愚かしい真似はしないだろう) 話す事はもう無くなったので、クラーケンの海将軍に話しかける。 彼は牢内の同胞に、また来ると言ってクリシュナを外へ案内した。 |
ところが彼らは外へ出た時、海闘士とは違う気配を感じた。 「予定より早いな……」 クラーケンの海将軍は呟いたが、どうも人数が半端ではない。 向こうは巧妙に気配を隠してはいるが、海は海将軍達のテリトリー内である。 海という空間そのものが、彼らに招かれざる闘士の存在を教えていた。 |