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海よりも深い青 その11

同じように別の異次元牢の前ではリュムナデスの同士の会話がなされていたが、こちらは少々事態が別の方向に流れていた。
カーサが過去に対戦した事のあるペガサスの聖闘士の事を、初代のリュムナデスが気にかけているのである。
「そんなにも生意気なガキなのか?」
カーサに尋ねられて、シーホースの海将軍は頷く。
「パラス様は気に入っていた様だが、あの聖闘士は馴れ馴れしい!」
青銅聖闘士という下っ端が、自分達の女神と言葉を交わすと言うのがどうにも腹立たしいと初代達はいう。

何故、奴が再び聖闘士となってカーサの前に現れたのか。
この事に初代はかなり動揺していた。
「根性で生まれ変わったんじゃないのか?」
カーサの言葉に彼らは首を傾げた。
「生まれ変わり?」
「東の方で、そういう思想があるらしい。
魂は身体を失っても、未来に再び身体を得るとか何とか言っていたな
専門家ではないから詳しい事は知らないがな……」
彼ら三人とも胡散臭いと思ってはいたが、二人のリュムナデスという現実がその言葉を嘘だと決めつけさせてはくれなかった。
「……では、その思想が本当なら、いつかパラス様に我々は巡り逢えるのだろうか?」
遠い未来。再び宿命は自分達を女神と引き合わせてくれるのか。
儚い夢だなと、彼は言葉を続けた。
カーサは面倒くさそうに答える。
「聞いた話によると、生まれ変わる前の記憶は大人になるにつれて忘れてしまうらしい。
探すのなら子供のうちだろう」
カーサが否定的な事を言わなかったので、彼は少しだけ嬉しそうに笑う。
「あの方は西の地にヘスペリデスの園があるのなら、遥か東の地に何があるのか見てみたいとよく仰っていた。
もしかすると、冒険心を起こして東へ行かれているかもしれないな……」
この時カーサはペガサスの聖闘士は日本人だった事を思い出した。
(まさかな……)
初代のリュムナデスの海将軍は精神が同調していた筈だが、カーサの疑問に対して何も言わなかった。

★★★
海底神殿内では大勢の闘士達が女神テティスを探していた。 だが、何処にも見つからない。
もう既に神殿内には居ないのではないかという意見が彼らから出始めていた。
「万が一、姿を隠す術を使われていたら、我々では絶対に見つけられないぞ!」
スキュラの海将軍は、女神を発見出来ない事に焦り始める。
「私は一応、海皇様にこの事を伝えておきます」
女神相手では人間が出来る事に限界があるが、どんな事をしてでも女神パラスを見つけねばならない。
たとえ主の怒りに触れようとも……。
セイレーンの海将軍は海皇のもとへ行こうとしたのだが、それをカストールが止めた。
「待ってくれ!
ほんの少しで良い。時間をくれ」
「……」
★★★