INDEX

海よりも深い青 その8

それは女神アテナの親友である女神パラスが、海皇に内緒で鱗衣であるシードラゴンを見せに来た事だった。
持ち運びしやすい様に少々小さくされた鱗衣。女神の腕の中にあったのだが、どうも視線を感じる。
理由を付けて女神たちから離れると、いつの間にかシードラゴンの鱗衣が背後にいて自分の事を見上げている。
『カストールの事、気に入ったみたいね』
女神パラスはそう言って笑った。
後の海将軍の為にある鱗衣が?
冗談だろうと思った。
私は弟の影だ。
決して表には出ない。

私は弟とは闘いたくない。

★★★
結局、その日は女神パラスに抱かれて、シードラゴンの鱗衣は海へと戻った。
ほっとする反面、あの鱗衣だけは弟に見向きもせずに自分だけを見ていた事が嬉しかった。
自分は死すべき定めの人間だ。
あの鱗衣はそれでも良いと言うのだろうか?
だが、あの鱗衣がここへ来る事は二度とないだろう。
向こうは海世界を守護する闘士に与えられる存在なのだから。
★★★
ところがシードラゴンの鱗衣は、再びやって来た。
今度は美しい海の女神と共に……。

ありのままで良い。
そんな貴方が一番好きだと、女神と鱗衣は自分に言ってくれた。
★★★