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海よりも深い青
その4 |
「……まだ、シードラゴンの鱗衣をまとえないのですか?」 |
彼らが慌てて霊廟に向かうと、見張りについていた筈の海闘士たちが気を失って倒れていた。
そして霊廟の中には青い光りをまとった二人の男が、幾人もの海闘士たちに囲まれて床に腰を下ろしていた。 誰もがその男達を見て困惑している。 その理由は直ぐに判った。 「誰だ。お前達は……」 彼らは牢屋に閉じ込めていた筈の、クリュサオールとリュムナデスの鱗衣をまとっていたのである。 そして二人は、カストールと目が合った途端に、 「シードラゴン!」 と、指を差して驚きの声を上げた。 「知り合いか?」 他の海将軍に聞かれたカストールだが、知っている筈が無かった。 |
そして問題はそれだけではない。
柩の中が空っぽなのである。 誰もが謎の二人を怪しむ。 だが、侵入者が本物の鱗衣をまとっているのである。 何がなんだか判らないと言うのが、彼らの正直な気持ちだった。 その時、目を覚ました見張り役の海闘士たちの証言で、霊廟に強引に入ったのは女神テティスである事が判る。 そして彼女は女神パラスをここから連れ出すと呟いていたと言う。 「あの方を早く見つけろ!」 来て欲しくない客が、もう直ぐこの海底神殿にやって来るのだ。 上手く納めないと、客達はあることない事を自分達の主に報告しかねない。 それでも構わないと思いながらも、やはり女神パラスとの最後の言葉である 『何があっても、自分の事で決して争わないで……』 と言う約束は守 りたいと彼らは考えた。 |