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海よりも深い青 その2

その日、シードラゴンは一人の少年の事をじっと観察し続ける。
あとで教えてもらった情報によると、その少年はスパルタの王子でカストールという名前だった。
一緒に居た彼の弟は双子座の黄金聖闘士だと言う。

(カストール君が主になってくれたら良いなぁ〜)

シードラゴンは海底神殿の天井を見ながら、そう呟く事が多くなった。

★★★
そんなシードラゴンの様子を見て、海妃アムピトリーテの妹神である女神テティスがシードラゴンを地上へ連れていった。
カストールという少年の事は知らないが、シードラゴンが主にと望むほどの人物である。
興味が無いと言えば嘘になる。
そして聖域の海岸で女神テティスはカストールを見初めてしまう。

相手は人間の少年。 そして自分には呪わしい宿命があった。
最初から恋が成就するとは思ってはいない。
だが、女神テティスは彼が恋しくて仕方なかった。

この事態に驚いたのは海皇と配下の神々。
そして何一つ祝福出来るものが存在しない恋を、女神パラスは祝福すると言う。
その表情はとても嬉しそうだった。
だが、運命の日。海の至宝と呼ばれた女神パラスは、親友である女神アテナの剣の前に倒れた。
何故?
誰もがそう思った。
だが、親友である女神アテナがショックで何の反応も示さなくなった今、真相は闇の中となり事実だけが残された。
★★★
シードラゴンとマーメイドの鱗衣が霊廟の中に籠もっている頃、海将軍達はとある問題に頭を悩ませていた。
冥妃ペルセポネが三巨頭の一人であるワイバーンの冥闘士を連れて海底神殿へやって来ると言うのだ。
親友に最後の別れを言いたいという願いを冥王が聞き届けたのである。
そして冥妃が来るのと同じ頃、よりにもよって天上界からも大神ゼウスの命を受けた使者も来ると言う。
それも聖域から牡羊座と牡牛座の黄金聖闘士が一緒にというおまけ付き。
最悪としか言いようが無かった。
★★★

大神ゼウスは女神パラスと女神アテナが手を組む事を警戒していた。
だから今まで女神パラスも常に武装する様な事はせず、謀叛の疑いをかけられるような事は極力避けていた。
だが、そんな女神の気遣いも大神ゼウスにとっては小賢しい小娘の策略にしか見えない。
何せこの二柱の女神達の活躍で、ギガントマキアは大勝利を納めたのだから……。
次はその力を自分達に向けるに違いないと、既に考えられていた。

大神ゼウス自身、地母神ガイアの予言通り父神を滅ぼした神である。
そして娘である女神アテナは、ゼウスの次の支配者を産むと言う母神メティスの宿命を背負っていたのだ。
女神パラスが女神アテナの味方である以上、彼の疑念は他の神々も思っていた事だった。
故に今回の一件の裏に天上界が関わっていると誰もが考えた。

★★★