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海よりも深い青
その1 |
神殿の奥にある霊廟で、鱗衣のシードラゴンは呆然としていた。 |
鱗衣がこの海を守る為に作られた時、海皇は自分が気に入った闘士に彼らを与えるつもりだった。
だが、女神パラスは鱗衣に選ばせた方が良いと言ってくれた。 相性の悪い闘士に与えたところで上手く扱えるわけが無いと、彼女は鱗衣たちの味方をしてくれたのである。 だから鱗衣たちは女神パラスの想いを無駄にしない様に、自分達の主を慎重に決める事にした。 愚かな人間を主にしては、女神の立場を悪くさせるからだ。 だがマーメイドの鱗衣は、よりにもよって女神パラスを主に決めてしまう。 『女神様以外は、絶対にイヤ!』 この発言に女神は困惑してしまう。 確かに自分は武神ではあるが、鱗衣を常にまとう事は出来ない。 いつも武装しては、色々と問題が発生するからである。 仕方ないので説得は長期戦になると考え、急いでマーメイドの為に闘士を見つける様な事はしなかった。 だからマーメイドはいつも女神と一緒だった。 |
『パラスさま、海将軍が七人揃ったんですよ』
しかし、霊廟内はしんと静まり返っていた。 |
穏やかな日々。
自分達の気に入る闘士は、なかなか見つからなかったが、それでも鱗衣たちは平和である事を喜んでいた。 そんなある日、女神パラスはシードラゴンを地上に連れていった。 留守番をさせられたマーメイドには悪いが、シードラゴンは女神様と一緒のお出かけにワクワクしていた。 初めての地上は、とにかく光あふれる世界で海の底の世界とは全然違う。 シードラゴンは周囲を見回した。 「実はね。アテナに貴方を見せるって約束しちゃったの。 お祖父様には内緒よ」 女神様はそう言って笑った。 優しい笑顔。大好きな表情。 そして彼女の視線の先に居る人間を見た時、シードラゴンは運命的な邂逅をする。 女神アテナに付き添っていた二人の少年。 同じ顔をしていたが、シードラゴンはその内の一人に強く心惹かれた。 |