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玲瓏 その6
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当然、その様子はムウも気付いていた。 「老師……」 「大丈夫じゃ。 だが、万が一のときは春麗を連れて行ってくれ……」 周囲を取り巻く気配は、複数の人間が此処に居る事を教えてくれている。 もし、相手が冥王を信奉する者たちならば、狙いは封印の塔の在り処を知るワシだろう。 だが、問題は向こうに春麗の存在が知られてしまっているかもしれないと言う事。 ムウには、妹と此処に居て巻き込まれた一般人の振りをして貰った方が良いかもしれない。 風が吹いた時、複数の影がワシとムウに向かってきた。 いや、向こうの狙いは春麗の方だった。 その為、ムウも手加減が出来なかった。 ワシ等は10名近くの敵を瞬時に倒してしまった。 |
「こいつらは何の為に春麗を狙ったのでしょうか?」 「分からん。春麗の方にも事情があるのじゃろうか?」 こんな騒ぎが起こった所為か、さすがに春麗が起きた。 だが、愚図りもせずに初めて会うムウの事を見ている。 ムウの方はというと、初めて会う幼子の眼差しに先程よりもよっぽど緊張していた。 と、その時、ワシ等の前に一人の男が現れた。 |
「お久しぶりです。老師」 「サガか……」 そこに居たのは双子座の黄金聖闘士サガ。 いつの間に居たんじゃ? 「サガ。師シオンが!」 ムウはそういった後、言葉が続かなかったらしい。 ただ、表情を凍らせて春麗の事を抱きしめる。 「聖域の異常事態は私も聞いた。 あのアイオロスが反逆したとは信じられないが事実らしい」 ワシはサガの様子に何か不自然なモノを感じた。 何と言われると説明しにくいのだが……。 サガは悲しげな表情で言葉を続ける。 「女神アテナはアイオロスから奪還出来たのですが、どうもこの醜聞を外部に流した者が居るらしく、邪神を復活させようと目論む輩が動き出しました。 そしてその話が何処で歪んだのか、今は老師が育てている事になっている様です」 教皇シオンが足しげく通っている話が敵対勢力に漏れたのなら、そのように解釈する愚か者も出始めるだろう。 「春麗は女神アテナではない」 「それは分かっております」 サガの返事はきっぱりしていた。 「ただ、今の聖域は教皇が不穏な動きをしております。 私も女神を守る為にこれから姿を隠さねばなりません」 その時、ムウが大声を出した。 多分、ワシ等の会話が我慢出来なかったのだろう。 「では、あの教皇は私の師ではありません!」 その声に驚いて春麗が泣きだした。 「あれは別人だ」 ワシもその意見は正しいと思う。 しかし、サガは首を横に振った。 |