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玲瓏 その3
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(此処は人里離れた場所だ) しかし、近くに村が無いわけではない。 だが、最近は村にも近づいていないので、昔の知り合いが村に居るかどうか分からない。 「ふにゃぁ〜」 そんな子猫のような声を出した後、赤ん坊は火がついたかのように泣きだした。 「わわっ。泣くでない」 そう言いながらも、赤ん坊にワシの言葉が分かるわけが無い。 とにかく緊急事態ゆえ、村へと瞬間移動を試みた。 |
「仙人様!」 |
乳を貰い、襁褓を替えてもらった赤ん坊は、安心したかのように眠る。 そしてワシはようやく、赤ん坊が女の子である事を知らされた。 「ところで、この赤ん坊についてなのじゃが……」 本題を切り出す。 何処か心が重い。 親について何か知らないかと尋ねていくうちに、真偽のはっきりしない噂話がゴロゴロと出てきて憂鬱になった。 「仙人様がお育てしては如何ですか?」 誰が言いだしたか分からない言葉にワシは動揺してしまう。 だが、赤ん坊を連れて村を出る時、何枚かの襁褓と大事に使われていた衣服を貰っていた。 |
こうしてワシは赤ん坊を預かる事になった。 長く続いた良く言えば平穏、悪く言えば時間の凍りついたワシの所にやってきた娘。 聖域を出てから初めて優しく温かい春風を感じたような気がした。 |