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光る花 その3
『……』
「もう、戻るの?」
彼女の言葉にワイバーンは頷く。
「……会いに来てくれて、本当にありがとう……」
その目から零れる涙を、ワイバーンは綺麗だと思った。
多分、もう会えないかもしれない。
でも、自分がやった事は間違いではなかったと、彼は考える。

闇色の冥衣はその翼を大きく広げると、主の元へ飛び立った。
そして彼の姿は闇に溶け込む。
ユリティースは彼らの消え去った後を、しばらく見つめていた。
★★★
シャイナは無事、見届けが終わった事に胸をなでおろす。
「何事もなくて良かったな」
背後で不意に言われて、彼女は飛び上がらんばかりに驚いた。
「ミロ!!」
「冥衣にも健気な奴がいるんだなぁ〜」
見当違いの感想を呟かれて、シャイナは怒り心頭に達する。
「何で此処にいるんだ!」
「えっ〜。シャイナを夜の散歩に誘おうと思ったら、ユリティースと出て行くのを見かけたから付いてきたんだ。
女二人で夜遊びかと思ったからさ〜」
「誰が夜遊びなんかするか。
貴様といっしょにするな!」

見当違いな所でサンダークロウが炸裂したので、ユリティースは何が起こったのかと首を傾げた。
★★★
数時間後の場所は変わって日本での出来事。
城戸邸に、非常に珍しい人物がやって来た。
「パンドラ……、どうしたの……」
沙織は三巨頭の一人であるミーノスを連れた彼女を見て、少々驚く。
非常に怒っているのである。
「アテナ。聞いてくれ!
ラダマンティスに女がいる!!!」
「はぁ???」
パンドラは口にするのも汚らわしいとばかりに、それ以上は何も言わない。
言葉を続けたのはミーノスだった。
「ワイバーンの冥衣に女性の匂いが付いているといって、パンドラ様がラダマンティスを引っぱたいてしまったのです。
ただの痴話喧嘩ですが飛び出されるのもやっかいですから、しばらく預かっていただけませんでしょうか?」
既に保護者のような言い分に、沙織は笑いを堪えるのに必死だった。
そして、オルフェが聖域に向かって帰っている事に、胸をなでおろす。
この二人が顔を合わせるには、まだ時期尚早な気がしたからだ。
「好きなだけ居ていいわよ。 なんだったら、ニケと一緒になって味方もするわ!」
いきなり戦の女神の本領発揮のような言葉を聞いて、パンドラは頼むと言い、ミーノスは小さく笑う。
天猛星の男は、この時点でかなりのピンチに立たされた。
★★★
『……』
冥界に戻ったワイバーンは、花畑に居た。
ここにはもう彼女は居ない。
でも、この優しい場所には、相変わらず綺麗な花々が咲いており、優しい光が降り注いでいた。
『……』
これから日本へ行って、主と一緒にパンドラ様を迎えに行く事になっている。
自分を呼ぶ主人の声に、彼は翼を広げた。
もう此処に来る事はないかもしれないと思った。
でも、ここもまた冥界なのだから、守るべき場所である。
彼は一度だけ花畑の上を旋回すると、自分の主の元へと羽ばたいていった。

〜了〜

あとがき

何だか、ワイバーンの冥衣がカッコいいぞ!
もしかしてワイバーンの初恋物語かと
思ってしまいました(笑)

しかし、ラダマンティスは本当に報われないなぁ〜。

ユリティースさんがたくさん書けて、
幸せな管理人でした♪