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A
surprising present その4
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慌てて冥界のハーデス城に戻る。
パンドラはもちろん着替えなどしていない。 「とにかく、あのハープに細工が施されていないか調べるのだ」 そして彼女はある事を言い出す。 「私はこれからエリュシオンに行ってくる!」 「えっ!」 何の関連性があるのか判らず、三巨頭は思わず聞き返してしまう。 「もし、何者かの狙いが私ならば、今度狙われるのは弟だ。 あの子を守ってやらねば!」 発言は非常に立派なのだが、彼女の現状と冥王の実力を考えると納得しきれない三巨頭だった。 「でも、一般にエリュシオンに行ける者など普通はいませんが……」 「とにかく、弟が無事ならそれで良い。 私は行ってくるぞ」 そう言って、ちょこちょこと走り出した女主人の姿は非常に可愛らしかった。 ミーノスとアイアコスはもう一人の仲間の肩を叩く。 二人から両肩を叩かれたラダマンティスは、彼らの言わんとする事を瞬時に理解する。 「俺が行くのか?」 以前だと、エリュシオンに冥闘士は行けない事になっていた。 だが、冥王がパンドラを非常に慕う様になってから、パンドラと一緒なら冥闘士も行ける様になった。 彼女一人だと、エリュシオンのニンフが引き止めようとするので、業務が滞ると言う一幕があったからである。 うっかりすると冥界の女主人を返して貰えなくなる。 冥王自身はそれでも良いと思っているのだが、こればかりはタナトスとヒュプノスから止められた。 「行って下さい」 「ニンフ達に連れて行かれると、向こう3日間返して貰えなくなるぞ」 ミーノスとアイアコスの説得に、ラダマンティスは慌てて彼女の後を追いかけた。 |
楽園と呼ばれるエリュシオン。
そこで暮らしているニンフ達は、綺麗なもの、清らかなものが大好きである。 案の定、ニンフ達がパンドラを着せ変え人形にしようとしていた。 パンドラはとにかくニンフ達の手を逃れると、ラダマンティスの後ろに隠れる。 彼としては、子供服を何故ニンフ達が持っているのかも非常に謎なのだが、彼女達に聞いた所で、 「可愛いから有るのです」 と、意味不明な返事を言われるのが判っている。 不毛な会話はしたくないので、急いでパンドラを担ぎ上げると、その場を離れようとした。 その時、部屋に双子の神々が現れたのだった。 |
彼女はワイバーンの冥闘士が自分を担ぐと言う無礼に少々不機嫌になる。
(このような荷物扱いをされるとは! これでも私は年頃なのだぞ!) そんな事を思っている時に、死の神タナトスはパンドラの姿を見て笑った。 『何だ。随分ちっちゃくなったな。 懐かしい姿だ』 彼女は思わず昔を思い出して、腹立ちまぎれに怒鳴ってしまう。 「今の方が体積がある!」 『……』 神々ですら、何て返事して良いのか判らない反論だった。 |