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A surprising present その2

「可愛い〜〜」
これが沙織の第一声。
やはり私服を着ている天秤座の黄金聖闘士は、大きなスーツケースを持っている。
その童虎に至っては自分の娘を思い出しているらしく、懐かしそうに見ていた。
「言っておくけど、パンドラに送った焼き菓子はドイツのお店から直接送って貰う様にしていたから、 私は触ってもいないわよ」
ハインシュタインの城には行けないので、沙織とパンドラの会談は近くの村にある、ただ一軒の宿屋で行われた。
一応、数人の冥闘士たちが私服で周囲の様子を伺っている。

「……そうか。
アテナの事だから、成長を止めたり促進させたり逆行させる術を使ったのだと思ったのだが……」
パンドラの言葉に、沙織と童虎は沈黙した。
「……とにかく、何か妙な組織が冥界に関わろうとしている情報を掴んだら教えるわよ」
古今東西、不老不死を求めるものは多い。
沙織の言葉に、アイアコスは眉を顰めた。

★★★
本題が一応済むと、沙織は童虎に持たせていたスーツケースを受け取る。
「それよりもパンドラ。 貴女にお願いがあるの!」
「何だ?」
「高級子供服のモデルになって!
洋服も用意したわ!!」
目の前にどんと置かれたスーツケース。
アイアコスから話を聞いた時、彼女は即、この計画を思いついたのだ。
★★★
パンドラは直ぐに断ろうとしたが、目の前に出された綺麗な洋服の数々を見たら、 小さい頃に母親とたくさんの洋服を並べて父親の会社へ行く時準備をした事を思い出してしまった。
懐かしい記憶。
その心の変化を沙織は素早く察知する。
「仕事料は出すわ!」
「……よかろう」
この阿吽の呼吸の様な素早い会話に、三巨頭は反対する暇がない。

「冥闘士の中に、以前撮影関係の仕事をしていた者を連れてきましょう」
ミーノスの判断は非常に前向きだった。

冥闘士も100名近くいると、さすがに人間だった時の職種もバラエティに富んでいる。
カメラマンも居ればメイクアップアーティストを目指していた者もいた。
ヘアデザイナーもいたし、服飾関係の学校に通っていたと言う者もいた。
ほとんど必要な人材が揃っていると言うのが、沙織は羨ましかった。
「アテナ。何か不穏な事を考えてはおりませんか?」
童虎に言われて、沙織はにっこりと笑う。
「別に考えていないわよ。
彼らに他の事も出来る様になれと言うのは、酷ですからね」
そして手伝わされる他の冥闘士たちは、まるで何処かのアルバイトの如く扱き使われている。
★★★
「きゃぁぁ〜♪
可愛いわ!
沙織は自分のイメージ通りのモデルの登場に喜ぶ。
「そ、そうか?」
準備を終えたパンドラは濃い緑色の子供服を着ていた。
そしてその立ち姿は何処から見てもお姫様。
ラダマンティスは呆然とし、ミーノスは可愛らしいと言い、アイアコスは動き難そうだなと正直な感想を呟いた。