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そのままの君でいて〜春麗18歳〜
その10 |
紫龍がジャミールへと無理矢理旅立たされた翌日、春麗は肩に鈍い痛みを感じた。 |
そしてムウが満身創痍の紫龍とジャミールへ戻ったのは、3日後の事。 「ムウ様、今回は何があったんですか?」 家にいた貴鬼が驚きながらも、二人にお茶を出す。 紫龍はもう何も言いたくないといった様子で、椅子に座った後テーブルに上体を伏してしまった。 (あれはいったい何だったんだ? そもそも俺は何処へ連れて行かれたんだ??) この3日間の出来事は、紫龍にとって衝撃を通り越して思考が停止にまで追い込まれた。 しかし、ムウは平然としている。 「今回は紫龍がいて助かりましたよ。 あの魔獣を退治してくれたのですから」 牡羊座の黄金聖闘士の言葉に弟子は驚いたような表情をする。 「ムウ様、あの噂の魔獣が出たのですか?」 「私も初めて見て驚きましたよ」 しかし、その口調は何処かのんびりとしている。 (ムウは魔獣除けの道具を忘れたと言っているが、絶対に嘘だ!) 二人の会話を聞きながら、紫龍は妙に断言することが出来た。 |
「ところで貴鬼。五老峰の様子はどうですか?」 お茶を飲みながら、弟子に三日間の出来事を尋ねる。 「面白いです。ムウ様」 弟子の返事にムウは眉をひそめる。 「面白い?」 「老師がいきなり身体を鍛えると言って、アイオロスさんを相手に、棒術やら剣術を見せてくれるんです。 物凄くカッコいいんですよ!! それに春麗も習っているから、オイラも時々相手をしているんです」 貴鬼は興奮しながらその時の事を説明するのだが、ムウと紫龍は話を聞いて複雑な表情になった。 「春麗に教えるとは……。 それに老師はあの子に近付く男を叩きのめすつもりですかねぇ?」 ムウがそう呟いた時、貴鬼が笑いながら答えた。 「それをやるのはシオン様みたいですよ」 弟子の言葉に、茶を飲んでいた二人は思いっきりむせ返ってしまう。 「何でそこで師匠が出てくるのですか!」 「えっ? 昨日、日本から直接シオン様がやって来て、老師の練習相手をしながら、そう言っていました。 何でもこんな楽しい事を老師一人しか体験できないのは狡いって……」 その返事にムウは溜息をつき、紫龍は疲労感で身体を動かすのも辛かった。 |