溢れる光
彼女は上を見上げた。
もう、ここにいてどれくらいの時間が経ったのだろうか。
楽園とも言うべき世界。
ここには美しい草花と澄んだ水と瑞々しい果物たちがある。
でも、あまり長くいると、ここは非常に危険だった。
この世界に取り込まれてしまうから。
全てを忘れそうになってしまうから。
悪い世界ではない。
ここでは酷い怪我をしても時間をかければ治る。
でも、世界と同化するのが早まる。
どうにかしないと……。
ジュネは魔鈴になんとか今の状況を伝えたが、さすがに異世界のような場所からの救助は聖闘士達には手に余ることかもしれない。
もしも自分一人だけなら諦めもつく。
だが、そうではない。
だから諦めきれないのだ。
とにかく脱出するための方法を探しつづけよう。
そう考えてジュネが歩きだそうとしたとき、何かが震えるような音が聞こえてきた。
穏やかだったこの世界で一度も聞いたことの無い音である。
彼女は何かが起こるのだと判断した。
そして駆けだす。
あの子の傍にいないと!
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