三番目に来たのは炎。
鉱石の色が変わる。
炎の遺跡では、ルードヴィグがいるだけで、遺跡に炎の力が溢れていた。
「実は私には娘がいてね。それが亡くなった妻に似ていて、とても美人なんだよ」
しかも、聖闘士たちを相手に家庭の事情を話している。
小さいころから炎の力が強かったのだが、それでもこういう力は人さまの迷惑になると思い使わないようにしていた。
でも、娘が原因不明の眠り病にかかり、医療費をとにかく稼がないとならない。
ということで、裏稼業として今回関わることにしたということだった。
「その……娘さん、名前は?」
「ソニアっていうんだよ」
その返事に蒼摩は叫び声をあげそうになるが、それは玄武の手によって口をふさがれた。
そして小声で簡単な事情を説明される。
ルードヴィグは軍神マルスが身体から消えたとき、それまでの記憶も失ったのである。
だからここにいるのは妻のミーシャを失って、それでも娘と健気に生きようするお父さんなのだ。
ソニアに関しては未だに眠り続けているという話なので、聖域に預けるよりも実の父親の傍の方が良いのではないかという判断が独立聖闘士達によって下された。
「それじゃ、エデンの事は!」
「覚えてはいない……と思うのだが、これは我々にも分からない」
全てを一気に解決することは出来ないし、そもそも今の段階では主導権はこちらには無い。
今回、独立聖闘士達が協力してくれるのは、目的が一緒だったのに他ならない。
「とにかく、敵対はするな。下手をすればソニアに会わせてもらえなくなる」
その一言に、蒼摩も頷く。今は耐えなくてはならない。
このとき、遺跡の中に幻の炎が立ち上る。
「誰かいるようです」
炎の使い手の言葉に玄武と蒼摩が、問題の場所へ駆け寄った。
そこに倒れていたのは獅子座の黄金聖衣をまとったミケーネ。
「大丈夫か!」
玄武が上体を支えて起こす。
ルードヴィグは突然現れた人物をじっと見ていた。
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