実際に村にお医者さんがいるというのは、とても心強かった。 瞬にまず懐いたのは子供たち。 そうして少しずつお互いに言葉を交わす。 そうしていくうちに村長たちにも瞬の事情が伝わった。 アンドロメダ島という場所で起こった悲劇。 そして大切な人の手を離してしまったという悔恨。 医者になったのも人を助けたいという気持ちと、その女性を探すときに医者ならば、何処にいても協力者を得られるかもしれないと思ったからだという。 ──あの時期の僕は、生ける屍だったかも。 魔傷の影響もあってなのか、心が無反応だったらしい。 気持ちが再び動いたのは、玄武が現れてからである。 ──謎のままだと、いずれ世界のバランスが崩れる。 だから、行方知れずのカメレオン座の聖闘士を探すのを手伝って欲しい。 そう言われたときのことは生涯忘れないと、後に瞬は村長に言った。 彼女を探す手段がある。 それが瞬にとって生きる意味にもなった。 「玄武さんが見込んだ通り、瞬先生は素晴らしい人です」 あのマルスとの戦いで起こった天変地異。 大地に闇の力が広がり、地球そのものが死の星になろうとしていた。 こうなると人間は強制的に火星へいかなければ生き残れない、という状態にまで追い詰められる。 このとき、玄武は天空の十二宮を支えて身動きがとれない状態だった。 |
村長たちもこれで終わりかと思ったとき、瞬が立ち上がる。 |
「ですから、お礼がわりに秘術を駆使して占いました。瞬先生の大事な女性がどこにいるのかを……」 |