目次
   

玄黄のシナリオ その10

 闇の遺跡で玄武は静かに時を待つ。
 目の前には幾つか階段のようなものが現れたが、何かが違うと囁く。
(これもまた試練ということか……)
 玄武は静かに目を閉じる。
 古き女神メデューサが己を赦すというのなら、意識が何処にあっても、外へ出るための階段を出してくれるだろう。
 それまでは石のようになって、揺るぎない想いを示し続ければいい。
 不意に五老峰の大滝の前に座していた老師を思い出す。
「今度は根気のない真似はいたしません」

 彼は薄く笑った。 

 空に暗雲が立ち込める。
 以前、雷の遺跡と呼ばれた場所は、今や瓦礫と化していた。
 修復をしようとする者などいない。
 そこに一人の女がいた。
 両手で水晶球を持っている。
「やはり黄金聖闘士ともなると、小手先の幻では騙されないか……」
 マントを頭から被ってはいたが、その奥にある眼光は鋭い。
 女は水晶球を布の袋にしまう。
(パラサイトの中に時間を飛び越える者がいると思って復活に力を貸したが……。さて、あの事件の時間に行く者は出てくるだろうか?)
 忌まわしきアンドロメダ島の粛正。
(兄上、必ずや仇をとります)
 彼女は笑みを浮かべる。
 その表情は美しく、そして生き生きとしていた。


〜終〜