ANIME-目次

   

続・異変 2

 部屋は黒い霧がかかっているかのようだった。アイザックは慎重に中へと入る。
(静かだな……)
 何かがいる気配は感じるのだが、何処にいるのかが分かりづらい。
 しかし、数歩歩いたところで黒い霧が薄くなったのか、誰かが立っているのに気がついた。
「海将軍か……」
 そう言葉を発したのは大柄で殺気を漂わせている男。彼はフェクダのトールと名乗った。
 身にまとう神闘衣には黒い氷が至る所に付いている。
「……」
 それは何処か不自然な付き方に見えないこともない。
「初めてお目にかかる。俺はクラーケンの海将軍、アイザック」
 その直後、アイザックに向かって巨大な斧が降り下ろされる。戦闘が始まった。


 ピラミッドに入ったミロは、壁を凍らせているカミュから今の状態を説明された。
「私は動けない。お前はミーメ殿と一緒に巫女姫を守ってくれ」
「わかった!」
 しかしいくら水瓶座の黄金聖闘士が水を凍らせても、他の海将軍が次の場所に行けるというものではない。戦闘状態の場所を増やせばカミュの負担が大きくなるし、下手をすればヒルダが危険である。
 とにかくアイザックの戦いがピラミッドにどんな影響を与えるのかを見極める必要があった。

「ここで戦っているのか?」
 ミロは問題の部屋をのぞき込む。
「そうだ。だが、真っ暗で何も見えない」
 カノンの返事に蠍座の黄金聖闘士は再び部屋をみる。
「……ぼんやりとだが二人が戦っているのが見えるぞ」
 この言葉に全員が驚く。
「何で見えるのだ!」
 海世界の筆頭将軍が怒鳴る。
 しかし何故といわれてもミロにだってわからない。
「知るか!!」と怒鳴り返した。

 こうなるとミロは解説役をする羽目になるのだが、どうにも戦況は思わしくない。なにしろ会話が成立せず、神闘士の方は明らかに相手を嬲り殺しにしようとする。
 このとような闘い方はトールのやり方ではない。何かしら手を打たないと、トールを救うことは出来ないと彼らは判断した。
「トールは操られているのです」
 ヒルダの叫ぶような言葉に、一同は他の神闘士たちも似たようなものだろうと察した。
 しかし、しばらくして戦況に変化が見られた。

 クラーケンの海将軍がヨルムンガルドの神闘士ではなく、彼の巨体を足場にして天井のある一点に拳を叩き込んだのである。
 打ち込まれたその場所から無数のヒビが入り、天井は崩れ落ちる。
 その細かい氷の破片が周囲に広がった


「いったい何をやったんだ」
 ミロがアイザックの行動についてカノンに説明を求めたが、カノンにだって分かるわけがない。とにかくヒルダを庇いつつミーメが部屋を見る。
 暗い部屋はどこからか青白い光を得て、その様子を一変させていた。
 そして無数の細かい氷が敷き詰められているかのような床にはトールが倒れていた。壁側にはアイザックがしゃがみ込んでいる。

「トール!」
 ヒルダとミーメが部屋に駆け込む。
「トール!!」
 ミーメが体を揺すると、相手がうっすらと目を開けた。
「ミーメ……? ヒル……ダ……さま」
 トールはヒルダがここにいることに驚いていた。