ANIME-目次

   

氷の宮殿 3

「貴様はパエトン!」
 カミュは聖域にて参謀長の補佐のようなことをしていた男の登場に驚く。そして彼は気がついた。聖域を覆っていた暗雲の正体に。
 聖域は内部に潜んでいた敵によって壊れようとしていたのだ。
「裏切り者と言いたいところだが、お前たちはそもそも味方などではなかったようだな」
「さすがに水瓶座は察しが良い。我はウガルルムのパエトン、我が炎の威力を受けてみよ」
 氷の大地に熱い風が吹く。
 ピラミッドが淡く輝いた。


 穴に落ちたアイザックは急に頭が痛くなり、その場に膝をついてしまう。
 彼はピラミッドの途中に着地することが出来たのだが、とにかく奇妙な感覚と頭痛、そして力が抜けてしまい動けない。
(これはいったい……)
 地上は戦闘状態になったらしい。激しい小宇宙のぶつかり合いを感じる。
 とにかく地上へ。その決意で彼は体を動かそうとするが、空気が重く粘着的な力を感じ動くこともままならない。
 そうこうしているうちに、上の方から水が流れてきた。
 ピラミッドもまた氷石の角が解け始める。
(は、早く……)
 彼が立ち上がろうとしたとき、ピラミッドの光が自分の足元と同化しそうな様子を見て彼は驚く。
「なにっ!」
 それは巨大な蛇の姿を取ると、アイザックの体に巻きつこうとする。
「ふざけるな」
 幻の蛇を吹き飛ばすべく、アイザックは自分の必殺技を放つ。

「オーロラボレアリス」

 その声と共に穴の中を凍気が爆発する。
 それは解けようとしていた氷を再び凍らせ、しかもあらゆる場所の水分まで凍らせたかのようにピラミッドは地上に繋がる氷の道を何本も作り上げた。
 まるでその姿は巣穴から外へ出ようとする大蛇の群れにも見える。
 このときアイザックは北欧神話に登場する大蛇『ヨルムンガント』のことを思い出した。