名もなき島は海上に現れている部分よりも海に隠されている部分の方が広い。そんな風に思えてしまうほど、洞窟の中は行けども行けども終わりがなかった。 そして、アイザックは自分たちを連れてきた争いの女神が何を目的として島にいるのか見当がつかずにいた。 ただ、この場合は女神アテナも黄金聖闘士達も同じ考えかもしれない。 「どこまで行くつもりだ」 海将軍であるカノンの問いにエリスは立ち止まる。 「お前たちが私の目的のものを見つければ帰って良いぞ」 しかし、この女神は目的のものを言ってはくれない。 言葉にすると先入観が邪魔をして見つけ損ねると言うのだ。ただ、海の気配が強い場所を見つけてくれ。それだけである。 (この島自体、海の気配が強すぎるのだが……) 洞窟内部に水は無いが、どうにも海底を歩いているような気がしてしまう。 クラーケンの海将軍は、立ち止まると周囲を見回した。 特に変わったものは見当たらない。 「ん?」 このとき、彼は何かヒヤリとした空気を感じた。 (冷気か?) それは岩の隙間から流れ込んでいる。 彼はその冷気の元が何なのか確認をすることにした。 細い空洞を進んでいく。 するとしばらくして、洞窟の岩盤に白い光が何かの文字のように浮かび上がっているのが見えてきた。 警戒しながらも更に進むと、奇妙な空間にたどり着く。 何か人為的に掘られた空間のようにも見えるが、アイザックが驚いたのはそこにいた人物だった。 相手もまた自分を見て驚いている。 「先生……」 「アイザック……。生きていたのか」 水晶聖闘士であった懐かしき師匠の足元には、自分の弟弟子が倒れている。 「氷河!」 アイザックが駆け寄ったとき、急に周辺の壁が強く輝いた。 それと同時に空気が震える。 彼は弟子を驚きの目で見た。 「アイザック。まさか、お前は海将軍になったのか」 その問いにアイザックは即答できなかった。 そもそも自分の師匠は聖域で内乱があったときに落命したはずではなかったのか。 岩盤に亀裂の入る音がした。 「アイザック。氷河を外に連れ出せ! ここは私がくい止める」 「先生!」 「行くんだ!」 アイザックは素早く氷河を抱えると、そのまま外に向かって駆け出す。 自分は亡霊を見たのか。それとも聖域の内乱についての報告に、何かミスがあったのだろうか。 わけが分からないまま彼は走っていた。 |
そして彼が地上にたどり着いたころ、他の者たちも行方不明だった星矢たちを抱えて現れた。 聖戦終了とともに行方不明だった彼らが全員戻ってきたのである。 しかし、アイザックは自分の師匠が現れない事に不安を感じていた。 |