ANIME-目次

   

海上 その1

その島はとても小さかった。
島というよりも浅瀬という表現の方が近いかもしれない。
そして、島の周辺には濁った色の海が広がっている。

このような場所に、一人の男が立っていた。
周囲に船もなく、どうやってきたのか分からない。
だが、男は船に置いていかれたという様子もなく、平然としている。
そんな男の背後に、別の人物が現れた。

「パエトン。 様子はどうだ」
男の問いに、その人物は片膝をついて拝礼を行う。
「ギガース参謀長。 聖域は冥王との聖戦に入りました。
どうやら女神アテナは冥界へ赴いたようです」
パエトンの言葉に、ギガースは面白そうに笑った。
「そうか。聖戦が始まったか。
海の神ポセイドン。 あなた様の血筋が、殺し合いを始めましたぞ。
どうです。あなた様の秘蔵っ子を呼び戻してはいかがですか」
ギガースが高らかに呼びかける。
それと同時に、島に寄せる波が少し高くなった。
「アスガルドの神闘士たちが秘蔵っ子の配下になる可能性を否定できなかったからこそ、あなた様はあれらを滅ぼした。
七つの海。七つの星。呼応する立場。
たしかにスキュラは片割れとしてカリュブディスが存在する。
如何ですか。海の神よ。
我々、バビロニアの者たちも手合わせをしてみたかったですよ」
島の周りを海流が渦巻き始める。
それに伴い、風も強くなってきた。
「海の神ポセイドン。 女神アテナをお守りください。
今の聖域では、我々の攻撃に一日も耐えられそうにありません。
それでは、我々の積年の恨みが晴らせませんからな」
ギガースの高笑いと同時に、海の波が島に襲いかかる。
だが、ギガースもパエトンもすでに島から姿を消していた。
波は再び穏やかになり、小さな島は海上にぽつりと姿を見せていた。
だが、その光景も太陽の光が何かによって遮られ、周辺海域は暗くなってきたのだった。